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二年目の春・6

「ほう、懐かしいのう。」

「揚げパンか。 最近はハイカラなパンが増えてあまり見かけんようになったな。」

一方この日横島の店では日替わりメニューとして揚げパンを提供していた。

パンは昔ながらのコッペパンで味付けは砂糖のみときな粉と砂糖と麻帆良では人気のココアの三種類になる。


「作り方は簡単なんっすけどね。」

年配者は砂糖のみやきな粉と砂糖の物が学生時代には給食で食べたりしたようで懐かしいらしく、麻帆良学園でも昔からの人気メニューで現在も昔ほど流行ってはないが食堂搭なんかでは今も売っていたりする。

横島がこの日揚げパンを日替わりにしたのは、麻帆良祭の出し物のメニューにどうかなと思い付きいろいろ味を試してみたりしていた。

斬新さは今一つないメニューであるがパンを揚げるというのは応用範囲も広く、加えて昨年のポテトのように業務用のフライヤーを使えば少女達にも出来る。


「でもカロリー高そうですね。 お祭りのメニューならいいのでしょうか?」

「あー、確かにカロリーは気になるわね。」

元々コッペパンの揚げパンは給食を作る調理師が作ったのが元祖だと言われていて、現代のように食べ物が豊富でない時代には貴重な甘いご馳走だったとも言われている。

その後も長く親しまれ現代にまで残る給食のメニューでもあるが、給食以外では食べる機会があまりなく懐かしいと感じる者も少なくない。

ただ若い少女達からすると明らかに油で揚げたパンに甘い砂糖がまぶしてあるとカロリーが気になるらしい。


「カロリーか。 実は甘くないやつも試してみたんだが。」

「何これ? コンソメ?」

「ああ、お菓子のコンソメ味だな。 雪広グループからちょっと貰って試してみたんだが。」

放課後になり少女達が学校から戻ってくると横島は試作した一部を少女達にも試食してもらうが、反応は賛否が分かれてしまう。

ソフトクリームを揚げパンで挟んだ物なんかは評判がいいものの、雪広グループに頼んで手に入れたスナック菓子に味付けする合成調味料をパンに軽くまぶしてみたものは美味しいという意見と別に揚げパンでなくてもいい味というものに分かれてしまったのだ。

元はコッペパンなので甘くないものもありなのだが、流石にスナック菓子用の合成調味料は少し味が濃くそのままでは好き嫌いが分かれる味になっている。


「思っていたよりは脂っこくないですね。 ただ少し飽きる気もしますが。」

「これさ、パンを一口サイズの小さなパンにしてカップみたいなのに入れて楊枝で食べるようにしたらいいんじゃない? そしたら量も選べるし。 あっ、でもパン作るの大変なのかな?」

この日は木乃香達の他にも美砂達も早く戻って来ていたのでいつの間にか店は試食会のようになるも、少女達の意見にはかなりいいアイデアがあり横島はそれらをメモしつつ改良点を探っていく。

横島はとりあえず普通にコッペパンで作ったが食べにくさや量的に少し飽きる可能性など指摘されていて、中でも美砂と円が言い出したパンの大きさを変えるアイデアは木乃香達ばかりか周囲で何故か話に加わっている常連の少女達なんかも絶賛していた。


「こういうのって、ちょっと物足りないくらいがちょうどいいのよね。」

「分かる分かる。」

「それに小さいとか口元も汚れないしね。」

「なるほど小さいパンか。」

揚げパンの欠点は食べにくさにもあり、それを改良すればいいのではという意見は味と同様に重要だが男の横島ではなかなか出ないアイデアだった。

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