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二年目の春・6

「あのマスターってそんなにいいの?」

「ふふふ、裕奈には分からないかな。」

同じ頃新体操部の部活で休憩をしていたまき絵は、たまたま一緒に休憩になったバスケ部の裕奈と話をしていた。

少し前からまき絵が亜子を誘い横島や木乃香達と一緒に夕食をほぼ毎日食べに行くようになったことは当然裕奈も知っていたが、彼女からすると流石に毎日行くまき絵を少し呆れたように受け止めている。

裕奈自身も学校帰りや休日には時々店に行くし夕食をご馳走になったこともあり、横島のことは面白くていい人だとの印象があるものの男性の好みかと言われるとそうでもない。

ファザコン気のある彼女からすると横島の子供っぽさが面白くはあるが男性として見れない原因だろう。


「確かに見た目はまあ悪くないしお金も持ってて面白くていい人だけどさ。 彼氏にするにはちょっと違うかなぁ。」

どちらかと言えば横島は近所のあんちゃん的な感じで今一つ男性として見れない裕奈からすると、まき絵のみならず木乃香達など周囲に居る友人達の気持ちや状況があまり理解できないらしい。


「裕奈はまだまだ子供だね! 那波さんとかいいんちょもマスターと一緒だと違うんだよ。 二人とも可愛い感じ?」

「そうなの? 難攻不落の那波さんを落としたのは確かに凄いけどさ。」

一方のまき絵に関しては横島に対して恋愛の情は持っているものの、現状ではそれ以上に横島と周囲の少女達の楽しくも暖かい関係が気に入っていた。

裕奈はどちらかと言えば恋愛ありきで見たり考えているが、現状の横島達は友達以上家族未満プラス恋愛といったところなので状況が微妙に違っている。

まき絵は裕奈に子供だと言って笑っているが実のところ年頃の異性が友達以上家族未満の不思議な関係になる方が珍しく、裕奈よりもそこに後から入り順応し始めてるまき絵の方が感覚的にはまだ子供なのかもしれない。

ただあまり恋愛ありきで近づくとヘタレな横島は身構えてしまうし、周囲の少女達が警戒するのでまき絵くらい天真爛漫でなければ入り込むのは難しいのだが。


「っていうかマスターの本命は誰なの? 誰かと付き合ってるんじゃないの?」

「うーん、本命は知らない! でも付き合ってるってことはないと思うよ。」

割と親しい裕奈から見ても理解できない横島と周囲の関係について、彼女は単刀直入に尋ねるもまき絵でさえ知るはずもなく気持ちがいい笑顔で知らないと言い切る。

やはり男女イコール色恋沙汰として見てしまう裕奈には横島達やまき絵の心境がやはり理解できないようで首をかしげて聞いているも、まき絵は新体操の練習に付き合ってもらっていた頃に聞いた話などを思い出し特に彼女は居ないのだろうと考えてるようだった。


「うふふふ、大事なのは心なのだよ。 裕奈。」

結局話を聞いてもよく分からない裕奈であるが、まき絵は知ったかぶりする子供のような笑顔で大事なのは心だと告げて笑いながら新体操の部活に戻っていく。

裕奈にはそれがどこまでが本気なのかは定かではないが、友人のまき絵の充実した日々の様子を見るとそれはそれでいいのだろうなと感じるようであった。

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