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二年目の春・5

「すっかり風物詩になりつつあるな。」

さてそんなこの日であるが朝の時間を過ぎると女子中高生が集まってくるが、テストが近いということで昨日と同じく店内で勉強する少女達が増えている。

ただ要領がいい人と悪い人の違いが顕著で、要領がいい人は分からないところなんかをある程度纏めてから店に来て横島なり先輩なりに聞くが、要領が悪い人はとりあえず店に来て勉強するというところか。

ある意味喫茶店らしい風物詩というか光景ではある。


「毎回言ってるが外れても責任は取らんからな。 ちゃんと勉強しろよ。」

なおこの日はこれまた恒例となりつつある横島によるテスト予想の山かけを頼まれた少女達に配っていたが、同時に横島はきっちりと外れても知らないからと釘を刺す。

まあ横島としては元々勉強などほとんどしなかった自分が大人になり勉強しろと言う立場になるのだから、幼い頃に感じた大人は勝手だという考えを思い出し内心では苦笑いを浮かべていたが。


「大丈夫大丈夫。 最低限は押さえてるから。」

「それにしても今回は他の人の山かけ減ったな。」

「減ったって言うより当たる人と当たらない人が居るから、当たらない人の予想は出回ってないだけみたい。」

相変わらず横島の元には山かけの参考にと他の人のテスト予想問題なんかも集まっていたが、一時期に比べると数は減っている。

塾の講師なんかはそれなりに当たるらしいが、大学生なんかが家庭教師をしたりして作った山かけはあまり当たらない人も当然居た訳である程度淘汰されたのだと常連の女子高生が語っていく。


「マスターの山かけはあちこちにコピーが出回ってるわよ。」

「なんか嬉しくないな。 知らんとこで外れて嫌われたらどうするんや。」

ちなみに横島の山かけは頼まれて渡した少女から友人知人へと伝言ゲームのごとくコピーが回されていて、横島の全く知らない少女にまで渡っているらしい。

元々横島は名物マスターとしてそれなりに知られているが、結果として今まではあまり知られてなかった高等部教師達なんかにも現在は知られている。

横島としてはかつてのような嫌われ者にはもうなりたくないのであまり自分の知らないところに山かけをばら蒔くのは止めて欲しいのだが、止めろと言っても無駄だろうし逆に止めろと言って嫌われるようなことも嫌なのでどうしようもない。

まあ救いとしては別に横島が特別という訳ではなく当たるテスト予想をしてる人のものはみんな広まっているので特に横島だけが目立つ訳ではないし、そもそも山かけには横島の名前が書いてる訳ではないので誰が作った山かけか知らない者もかなり居ることだろう。


「何が悲しゅうて大人になってまでテストで悩まんとあかんのや。」

「まあまあいいじゃないの。 そのおかげでお店も繁盛してるし可愛い女の子がいっぱい来てマスターも嬉しいでしょ。」

「そりゃまあ……。」

結果としてやはり横島は現状のまま流されるように周りに任せるしか出来ないが、大人になってまでもテストに振り回されることは嘆かずにはいられないらしい。

ただ常連の女子高生達もそろそろ横島の扱い方を覚えて来ていて、適度な距離で優しくするのが一番喜ぶとバレている。

あまりやり過ぎると木乃香達を刺激してしまい玉の輿狙いの魔法協会の女のように警戒されてしまうが、店の常連として友人として横島の機嫌を取るくらいならば問題なく彼女達はその辺りの距離の取り方が上手かった。

実際隙あらばと考えてる常連も居ない訳ではないが木乃香達が意外に隙がないばかりか、最近はアナスタシアまでよく店に居るので隙は全くなかった。

もちろん横島本人はそんな周囲のことを全く自覚してないが。

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