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二年目の春・5

「みんなもちゃちゃまるさんもはつねさんもすずえさんもおはよう!」

翌日は日曜であったが幼いタマモには特に関係があるはずもなく、この日もいつもと同じように庭の花壇や畑に水をあげると猫達と朝の挨拶を交わす。

朝は仕込みで忙しい横島に代わり最近はタマモがそれらの水やりと猫達の様子を見ることを行っていた。

ただ最近は新しい変化として茶々丸が新たに出来た妹の初音と鈴江を朝の日課である散歩に連れてきていて、麻帆良のあちこちにいる野良猫や横島宅の猫達に会いに来ている。


「おはようございます。」

茶々丸達三人はタマモに挨拶をされると寸分の狂いもなく同じタイミングで揃って返事をすると、茶々丸はさっそく猫達に囲まれてしまい撫でてやり初音と鈴江もまた茶々丸に促されるように一緒に猫達と戯れ始める。

当初は横島の気まぐれというかもったいないという思いつきから与えられた茶々丸の二人の妹であるが、一番影響があったのは茶々丸本人であり妹が出来たということは彼女の魂に様々な影響を与えていて一番の変化は妹に対する責任感や慈愛が生まれたことだろう。

しかも初音と鈴江の二人は茶々丸が朝に散歩に連れて歩いてるばかりか、タマモも毎日ではないが散歩に連れて歩いてたりするので意外に近所を出歩いていて茶々丸に双子の妹が居たとご近所で少し話題になっていた。


「この子は何を求めてるのでしょう?」

「だっこしてほしいんだよ。」

二人の母親ではなく主は当然エヴァであるが彼女はどちらかと言えば放任に近く、茶々丸とタマモが実質的に二人の育ててるようなものだった。

タマモに関してはなんとなく茶々丸とは何かが違うと魂がないことを本能的に感じてるようだが、それはそれとして普段はタマモを育てている木乃香達のように麻帆良に来たばかりの二人にあれこれと世話を焼いていてすでに仲良くなっている。

特にまだ猫達の気持ちなんかを理解出来ない二人に対しタマモは猫達の気持ちを代弁したりしていて、二人はそれを学習して日々成長していた。


「よう、今日もお揃いだな。」

「おはようございます。」

そんな猫達と戯れるタマモと茶々丸三姉妹だが、横島が庭に猫達のご飯を持って現れるとまた同じタイミングで揃って挨拶を返す。


「調子はどうだ? 問題があれば早めに言えよ。」

「はい、ありがとうございます。」

茶々丸と違いまだ感情の起伏が乏しい初音と鈴江であるが、横島は特に気にすることもなく彼女達のボディに異常がないか尋ねて問題ないと知ると安堵する。

ボディは超鈴音製なので基本的な設計やなんかは未来の物で大きな不備はないし、横島もハニワ兵に頼んで稼働テストはしたが実際に動かしてみないと分からないことも無いわけではない。

特に異常気象のために計画が本来より一年早まったこともあり少し慌てて造ったと言っても過言ではないので横島も少し気にかけていた。


「ちゃちゃまるさん、いつになったらまたみんなでごはんたべれる?」

「うーん、いろいろあるからもう少ししたらな。」

ちなみにタマモはまた茶々丸と一緒にご飯を食べることを楽しみにしてるばかりか、初音と鈴江も茶々丸同様に一緒にご飯を食べるようにして欲しいと言い始めていて横島を少し困らせている。

魂がある茶々丸と完全なAIの二人に有機ボディを与えるのは全く違う話であり、横島もじゃあすぐにでもと言えないことだった。

尤も無理だとは言ってなく茶々丸の有機ボディが完成したのちになんとかするとは言っているが。

相変わらずタマモには甘い横島であった。


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