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二年目の春・5

「明日菜サンはみんなに愛されてるネ。」

「そうだね。 彼女を見守ってる大人は君が思っている以上に多い。」

魔法世界よりも明日菜個人を優先すると改めて言い切った高畑に葉加瀬はやはり信じられないような表情を見せるも、超は少し羨ましげに高畑の言葉を受け止めていた。

明日菜ならば少なくとも魔法世界の犠牲を減らせるが、それは彼女の今の平凡な人生を犠牲にするものなのだ。

超としては明日菜を一旦犠牲にはするが最終的に明日菜が望めば全てが終わった後に再びこの時代へと連れてくることも考えてはいたが、高畑達は時間移動という不確定要素が多すぎるそんな超の案も許さないことは明らかだった。

それを身勝手だと言うのは簡単かもしれないが、歴史的な経緯を紐解くと明日菜は今まで犠牲にされ続けていてナギがようやく解放している。

今また彼女を犠牲にすることに彼女の身内が反対するのはある意味当然なことだった。

超は正直なところ明日菜が本当に羨ましく感じる。


「かつてはサウザンドマスターが、今は多くの人が愛するカ。 現実問題として高畑先生と葛葉先生にエヴァンジェリンと横島サン。 この四人の中で私は横島サンがどこまで強いか知らないが、かつての赤き翼にも負けない戦力のような気がするヨ。 私を出し抜いた情報収集能力を加えれば世界とでも喧嘩が出来そうネ。」

「ナギならそうしたのかもしれないけどね。 僕達は世界と喧嘩をする気はないよ。」

元々の境遇は明日菜も超に負けず劣らず酷いものだったが、超には命をかけて守ってくれて戦わなくていいと言ってくれる大人は誰も居なかった。

対する明日菜は世界と喧嘩をしてまで自由にしてくれたナギを筆頭に多くの大人に今も守られている。

そのあまりの違いに羨ましいとしか思えないのが彼女の本音であった。


「本当にエヴァンジェリンさんまでもが明日菜さんを守るんですか? 彼女が他人の為に戦うとは私には思えませんが。」

「ああ、間違いないネ。 エヴァンジェリンは他の誰でもない自分の為に明日菜サンを守るはずヨ。 今のエヴァンジェリンの幸せには明日菜サンが必要だからネ。」

一方基本的に超に従う葉加瀬は多少の不満はあれど口には出さなかったが、超がエヴァまでも明日菜を守ると言うとそれに対しては信じられないらしく疑問を口にする。

葉加瀬は基本的に人の気持ちとかあまり理解出来ない研究馬鹿なので分からないようだが、エヴァの現状の幸せそうな様子を見てると彼女の周囲に手を出すのはあまりに危険だと超は考えていた。


「私も直接見た訳ではないが平和な国に生まれた葉加瀬には分からないことだヨ。 エヴァンジェリンの本当の恐ろしさは。 麻帆良に来てからは大人しくなったし最近は信じられないほど優しくなったから理解出来ないのも分かるけどネ。」

幸せの価値を葉加瀬はあまり理解してないがエヴァは誰よりも理解しているだろう。

せっかく手入れた幸せと平穏な生活を取り上げようとすれば彼女は再び魔王となるだろうと超は確信していた。

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