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二年目の春・5

「そういや、あやかちゃんに任せっきりだけど報酬も渡してなければお礼もしてないんだよな。 そろそろ考えんとな。」

結局この日の会議では大まかな方針を中心に決めれることは決めて解散となり横島達はようやく終わったと一息つきつつ帰路に着いているが、横島はふと仕事がまた増えたあやかを見てあれこれと仕事を頼んでる割に横島から報酬が支払われてないことに気付く。

麻帆良カレー実行委員会の方は利益も出てる仕事なので報酬が実行委員会から支払われているも、納涼祭はボランティアであり加えてあやかはいつの間にか横島の窓口になっているので横島と学園の支援企業の仲介のようなことも少ししている。

元々納涼祭のまとめ役を頼んだことからズルズルと仕事が増えたのが現状だが、流石にいつまでもタダ働きさせるのはどうなんだと思い始めたらしい。


「突然ですわね。」

「報酬がいいか? なんか別の形がいいか? 世話になってるし大概の要望は聞けるぞ。」

一方のあやかの方は夕映と共にスポンサー関連の根回しの為に横島をいつ挨拶に行かせるべきか話ながら歩いていたが、突然の思い付きでまた妙なことを言い始めた横島を不思議そうに見つめる。

はっきり言えば横島は役に立たない時は本当に役に立たずあやかの負担は大きいが、きっかけはともかくとしてあやかは現状に不満はなく充実した日常を送っていると言っても過言ではない。


「特に思い付きませんわ。 それに我が家では例の不老の魔法薬を無料で頂いてますから。 あれの価値を考えたら報酬は不要かと思います。」

加えて横島が刀子が欲しがった老化防止魔法薬を近衛家と雪広家と那波家に無料で気軽に配っているため、あやかとしてはタダ働きしてるという認識自体全くなかった。


「そう言えばあれ配ってっけか? 元の世界で大量に売り捌いた余り物だから勘定に入れなくていいんだが。」

「不死はともかく不老は人類の夢ですよ。 しかもドリンク剤感覚で叶うなんて……。」

「基本的に横島さんはどんぶり勘定なんですよね。 貸し借りも含めて。」

横島としては刀子が欲しがったのでついでに世話になってる雪広家と那波家と近衛家に余り物を配っているだけなのだが、のどかと夕映はその辺りの横島のいい加減な性格をよく知る故に半ば呆れながらクスクス笑っている。

定期的に飲まねばならないがその分リスクもない老化防止魔法薬はそれだけで世界を制することが出来そうなほどの代物なのだが、それを在庫処分の感覚であっさり配る横島はやはり普通ではないと二人は思う。

実際横島は雪広家を筆頭に麻帆良御三家には世話になってると思っているが、どちらかと言うと近右衛門達の方が情報や魔法薬の価値を考えると釣り合ってないと悩んでいたりする。

ちなみに土偶羅からすると横島が平穏に暮らせる環境の価値を考えると決して貸し借りが釣り合ってないとは考えてない。


「ああ、一つお願いはありますわ。」

「ほうほう、何でも言ってくれ。」

「報告書の類いはきちんと目を通して下さい。」

「……はい? 報酬の話じゃなくて?」

「報酬の話ですわ。 横島さんが要望でもいいからとおっしゃいましたから。 きちんと報告書に目を通して頂けたら私は満足ですわ。」

そのまましばし悩んだあやかは、自身の報酬の代わりにと横島に報告書をきちんと読むようにと言い出すと横島は困惑したのか戸惑ってしまう。

あやかとしてはきちんと考えたのだがお金は欲しくないし今のところ頼みたいこともないらしく、地味に困ってるのは横島が報告書を流し読みで終わってしまうことらしい。

ちょっぴり意地悪するような笑みを浮かべて、そんなことを望むあやかに横島は困ったように笑って誤魔化すしか出来なかった。

尤もあやかとしてはその要望が叶えられても叶えられなくてもいいと言うのが本音であるが。
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