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二年目の春・5

その後いつものように店を営業する横島だが、朝の混雑が終わる午前九時を過ぎると木乃香達に店を任せて夕映とのどかとあやかと共に納涼祭の会議に出席する為に大学部がある地区に向かっていた。

納涼祭の準備は例によって完全に大学生達に委ねていてあやかに夕映とのどかが横島や協賛企業との調整をするなど活躍しているが、あやか達に今回は会議に顔を出して欲しいと言われて参加することになっている。


「そういや俺が主催者なんだよなぁ。」

「どうかしましたか?」

「いや、本当に今年もやるんだなと。」

一応納涼祭の準備状況や今後の予定は最低限はあやか達に言われて資料を見てるので知ってはいるが、横島本人に主催者の自覚はあまりなく改めて考えるとなんで祭の主催者なんかをやってるんだろうと思うらしい。

横島のイメージでは主催者などはお偉いさんがやるイメージが強く、成り行きとはいえまさか自分が主催者になるとは思えないのだろう。

そもそも去年にしても別に横島が主催した訳ではなく、夏休みの宿題を終えたら最後にパッとパーティでもしようと言っていたらいつの間にか祭になってしまい、最終的に主催者に祭り上げられていただけなのだから横島としてはよくよく考えると不思議としか言いようがない。


「実は世界樹通り商店街から納涼祭に参加したいという打診があり話し合う必要があるんです。 先方は商店街を歩行者天国にして参加したいと。」

「なんで今頃になって?」

「春祭りでも納涼祭開催の宣伝はしてましたから。 スポンサーが増えたので宣伝はしなくてはなりませんから。」

そして今回横島が呼ばれた訳だが、麻帆良で一番の繁華街である世界樹前広場からまっすぐに伸びる通りにある商店街から納涼祭参加の打診があったことが理由だった。

納涼祭自体も昨年より規模が大きくなることが決まっていてスポンサーもかなり増えたので宣伝活動もいろいろしていたらしい。


「参加したいって言うなら参加させればいいんじゃないか?」

「そう簡単にいきません。 祭りの規模を変えるならば計画全体の修正が必要ですしスポンサー各位にも根回しが必要ですし。 ただ世界樹通り商店街は麻帆良でも古くからある商店街ですから麻帆良での影響力もそれなりにあるんです。 先方はこちらのやり方に合わせるとも言ってるので無下にも出来ません。」

横島としては参加したいならさせればいいと軽く言うが納涼祭開催まで残り三ヶ月半の段階での計画の変更には相応の手続きが必要になり、一度横島も呼んできちんと話し合いをしようと大学生の実行委員会で決めたとのこと。

そもそも麻帆良は先に麻帆良学園あってその敷地内に後から街が出来た故に一般的な市町村とは都市の運営方法が全く違うのだが、商店街は麻帆良学園に次ぐ最古参の歴史があり雪広家と同様に学園や麻帆良に対する影響力が大きい。

学園や雪広家との関係も長い協力の歴史があり非常に良好なのだが、それ故に頭を下げられるとあやかとしては相応の理由でもない限りは断れないとの事情もある。

商店街の側も近年では郊外の大型店や都心部に客を取られていて苦労が絶えず、加えて麻帆良市郊外には雪広グループが運営する大型店もあるので今後も協力関係を維持する為にも商店街の納涼祭参加はあやかとしては実現させなくてはならなかった。

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