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二年目の春・5

「アイヤー。 相変わらず全然当たらないネ。」

同じ頃、魔法協会の地下訓練施設では高畑が古菲と豪徳寺達の修行をつけていた。

先日近右衛門から古菲と豪徳寺達を本格的に指導して欲しいと頼まれた高畑は超鈴音達のこともあり少し考えさせて欲しいと答えているが、それとは別に昨年から時々古菲達に気や魔法の秘匿を頼む変わりに気の使い方や戦い方の修行をつけていることは変わらない。


「君達は今のままでも十分強いよ。」

「しかし先生。 かの有名なサウザンドマスターはすでに十代半で無類の強さを発揮していたとか。」

ただ古菲側や豪徳寺達がいかに強くとも高畑と力の差は未だに大きく、ある意味高畑を見てるが故に古菲達は更なる強さを求めてるという部分もある。


「ナギはね。 流石に僕もその頃のナギは知らないけど、まあ話に聞いた限りでも凄かったらしいよ。 ただ彼はその分魔法が下手だったけどね。」

尤も古菲と豪徳寺達の間にもまた個性というか違いがあり、特に豪徳寺は図書館島の魔法協会専用フロアで魔法関連の戦いに関する本や文献を自身で調べるほどの勉強家でもあった。

その結果この数ヵ月で魔法使いに関してもかなり詳しくなっていて、実は夕映とのどかも何度か図書館島の魔法協会専用フロアで会ったことがあるほどなのだ。


「この前の葛葉先生といい高畑先生といい、本当に上には上がいるな。」

「あまり上ばかり見ても意味がないよ。 強さの行き着く先なんて僕にも分からないしね。」

正直なところ高畑はアドバイス程度ならばしたことがあっても弟子を取るようにきちんと人に教えたことがなく、もっと言えば人に物を教えるのがあまり得意ではないというのがある。

従って高畑は今まで古菲達にも軽くアドバイスをしつつ、後は実際にやって見せてそれぞれで修行をして欲しいと言うくらいだった。

古菲も豪徳寺達も才能があり努力家なのでそれで成果が出ているが、高畑はきちんとした指導者が教えればもっと上達するとも思っている。

だが問題もない訳ではなく豪徳寺達はともかく古菲は野性の獣並みに本当に何も考えてない時があるので、高畑も刀子が指摘する前から気にかけてはいたのだが。


「ありきたりな言葉だけど何の為に強さを求め何をしたいかはきちんと考えた方がいい。 今のままなら君達は自分を見失いかねない。」

実は高畑は古菲達を横島にでも任せた方がいいのではと少し前から密かに考えていたが、横島が彼らから逃げてるのも知っているのでどうしようもなかった。

そもそも高畑と古菲達は根本的な強さや力との向き合い方が全く違い、どこまでどうアドバイスしていいかすら悩みながら教えている。

高畑は生きるために守るために必要だったので死に物狂いで修行をしたが、古菲や豪徳寺達は少し悪い見方をすれば自身の欲求を満たす為に強さを求めてるようにも見えた。

そんな古菲や豪徳寺達にどう接してどうアドバイスするか、高畑は明確な答えが見つかってない。

一度詠春にでも相談してみようかと相変わらず何も理解してない古菲を見ながら考えていた。

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