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二年目の春・5

「……美味しい。」

そのまま調理実習は続きいよいよ試食をすることになるが、評価の為にと教師がそれぞれの料理を少量ずつ試食していくと一品一品感想を口にしていく。

感想は味のみならず具体的で調理工程のミスやアドバイスなども含まれていたのだが、木乃香達のパスタを試食した教師は思わず仕事ということを忘れそうになり美味しいと一言口にした。

生パスタの持ち味である少しモチモチした食感にとうがらしのピリッとしたペペロンチーノや濃厚なカルボナーラがそれぞれソースがよく絡み本当に美味しいのだ。

無論調理を見ていた教師は食べる前から美味しいのは理解していたが結果として想像以上だったと言うしかない。


「最近の喫茶店ってこんな料理出してるの?」

「アハハッ。 先生、マスターのとこが特殊なだけだよ。」

噂には聞いていたし家庭科担当であり主婦でもある教師は自身もそれなりに料理は出来る自負があるが、木乃香達の料理はそれを打ち砕くものであり軽く自信を失いかけてしまう。

そんな教師に最早評価する雰囲気ではなく驚く教師を少女達は面白そうに見つめていたものの、教師が思わず素直な質問をすると少女達は爆笑していた。


「本場のプロはペペロンチーノが一番パスタでは難しいと言うらしいわ。 それにカルボナーラも自分で作ってみると結構難しいのよ。 正直こんな美味しい生パスタ初めて食べたわ。」

料理上手な喫茶店だとのいうことは噂では知っているし昨年の料理大会の様子も彼女は後日放送されたケーブルテレビで見ている。

決して甘くみたり低い評価をしていた訳ではないが、結果として衝撃を受けたことに変わりはない。


「一口ちょうだい!!」

「ちょっと! 私達のお昼の分無くなるでしょうが!」

そして真面目な教師の素の笑顔を見たからか何人もの少女達が次から次へと食べたいと木乃香達の料理に集まり、まるでバーゲンセールのように周りを囲んでしまい明日菜は自分達の分が無くなる危機を訴えたが止まった者は皆無だ。


「みんな大げさやな~。」

ちなみにあやかに刹那や龍宮など何人かは流石にがっつくことなく料理を囲むクラスメートをみていたが、当の本人である木乃香達は木乃香が笑ってる以外は仕方ないなと言いたげな表情で見ている。

なお茶々丸は未だ超鈴音製ボディのため食事が出来ないからか、少し羨ましそうに眺めていたが。


「ねえ先生。 超りん達のとどっちが美味しい?」

「難しいことを聞きますね。 調理実習というならどちらも味は満点です。 ただ味以外ではみんなで協力していた様子から近衛さん達の方が若干ですが評価が上でしょうか。」

結果として木乃香達の料理は半分近くなくなり他のグループの料理を分けてもらうなどすっかりお昼の昼食風景となるが、ふとまき絵が教師に木乃香達の料理と超達の料理の評価を尋ねると少女達も興味があるのか静まり返り教師に視線が集まる。

試食も終わり冷静さを取り戻した教師はまき絵の質問に少し悩みながらも料理の優劣ではなく家庭科の調理実習の評価を答えたが、本音を言えば家庭科の担当は別に料理評論家でもなんでもないのでよほど分かりやすい差がある訳でもない両者の評価なんて出来ないだけだった。

ただまあ調理実習としてはみんなでの作業分担や調理する様子から木乃香達が評価が上なようで、超達はほとんど超鈴音と五月が作っていたことがマイナス評価らしい。

尤も木乃香達からするといつも夕食なんかを作る時と同じくしついて特に意識した訳ではなかったが。

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