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二年目の春・5

「おいしいね!」

「うん!」

そして夕食となりこの日は刀子も間に合いみんなで牛肉の赤ワイン煮丼をメインとした料理を食べ始めるが、少女達の反応は上々だった。

タマモや桜子やまき絵は掻き込むように食べているし、意外に反応がいいのはアナスタシアで彼女の場合は慣れ親しんだ料理だからだろう。


「美味しいのは確かにそうですが、麻帆良祭でやるには少々日本では馴染みがない味なのが少し気になりますわね。」

ただ麻帆良祭の料理にするならば少々問題があるのではと口にしたのはあやかで、あまり日本に馴染みがない料理なだけに少し奇をてらい過ぎかもしれないと感じたようだ。


「いいんちょ、なんでそんなこと言うの? こんなに美味しいのに!?」

「麻帆良祭ではフレンチなど食べぬような小さな子からお年寄りまで来るんですよ。 赤ワイン煮の風味や味は日本の人は食べ慣れぬ人も多いですから。」

そんなあやかに桜子は信じられないと言わんばかりに食って掛かるが、あやかは普段フレンチなど食べぬ人も世の中には多く馴染みのない味よりはもっと馴染みがある味がいいのではと自身の意見を語る。

横島の周囲の少女達は横島が時々気まぐれで海外の料理も作るので割と幅広い味を食べ慣れているものの、一般的な日本人でも一食数千円からそれ以上もするような料理を食べ歩かない人は決して少なくはない。

ファミレスなんかでもある味かと言われるとそこは少し疑問が残り、斬新ではあるが麻帆良祭のイベントとして出すには斬新過ぎると感じるのも無理はなかった。


「食べたことない料理って頼むのに迷うのは確かよね。 私達はマスターの味が好きだから食べたことない料理でも気にしないけど。」

「だよなぁ。 俺も同じ値段で隣に牛丼があればそっちに行く気がする。 まああくまでも参考になるかと思って作っただけだよ。」

そしてあやかの意見に続いたのは千鶴となんと横島自身で結局食べる前にある程度でも味を想像出来ないだけで頼むか迷うのが一般的であり、牛肉の赤ワイン煮はヨーロッパでは代表的な家庭料理でも日本では専門店に行かねば食べることがあまりない料理でしかない。

あやかに反発してた桜子なんかも先日の修学旅行を思い出したのか、見慣れぬ料理を去年の麻帆良カレーのようにみんな食べてくれるかと言われると確かに難しい気がした。


「ねえ、これなら丼物よりはパンに挟むとかしてハンバーガーとかホットドッグみたいにした方がいいんじゃないかしら? そっちならまだ食べ慣れない味もファーストフードとかでよくやってるわよ。」

「あー、そうかも。」

とりあえず試作第一号の牛肉の赤ワイン煮丼の問題点が明らかとなったが、ここで更に意見を口にしたのは日頃あまり料理に口を挟まぬ刀子だった。

さほど美食家でもなく一年前なんかはスーパーやコンビニの弁当のお世話になっていた刀子からすると、丼物にするには斬新過ぎるがファーストフードにするならばそれほど抵抗感が無くなるのではと単純に思ったらしい。

そんな刀子の指摘は横島や少女達の役に立ち、結局のところ横島が作ったのだから美味しいのは当たり前で問題はそこからだと少女達が認識した結果、それぞれに好き勝手に意見を口にしていき麻帆良祭のメニューについてみんなで考えて意見を出しあっていくことになる。

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