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二年目の春・5

「マスター、お腹空いたよ~!」

そしてこの日の夕食の時間となるがいつものメンバーに加えてまき絵と亜子も来ていた。

新体操部の選抜テストも無事に終わったもののまき絵は亜子を連れて引き続き毎日夕食に来るようになっている。

店で働いてる木乃香達はともかくとして美砂達やあやか達もほぼ毎日来てるだけに自分も一緒にと本人は考えてるらしい。


「おう、すぐに出来るよ。」

いつの間にか日暮れも遅くなり西の空はまだうっすらと明るさが残る時間であるが、まき絵はお腹がペコペコらしく厨房に駆け込むと期待に満ちた瞳で横島に声をかけていた。


「ねえ……。」

「夕食に来るくらいなら大丈夫でしょう。 いろいろ言動には気を付けねばなりませんが。」

一方フロアでは少女達がすでに夕食を待ちながら寛いでいたが、まき絵が自分達の輪の中に加わりたい様子なのは少女達も当然ながら気付いている。

ただなんというかこれでまき絵が横島の財産や才能目当てな馬鹿女ならば遠ざけるという選択しもない訳ではないが、今のところは横島や自分達と一緒に食事をしたり楽しんだりしてるだけなので手の出しようがない。

元々まき絵達が夕食を店で食べるのは時々あったということもあり横島自身はあまり気にしてないということも大きく、少女達は個々によって反応が違うがやはり気にならないと言えば嘘になるだろう。


「来るのはいいけど美味しいとこ持ってかれるのは流石に面白くない。」

問題は魔法や横島の秘密がまき絵達に漏れないかであるが夕映やあやかに千鶴なんかの真面目な少女は多少気にはしても、美砂達なんかは最悪まき絵達に口止めすればいいだけだと楽観視している。

そんな中で美砂が気にしているのは横島の反応であり、横島がまき絵達をすでに受け入れてるように見えることだった。

基本的に来るもの拒まずといえる横島なだけに特に驚きはないが、もしかすると横島の好きなタイプかもしれないと若干の不安はある。

協定という訳ではないが横島の周囲では現状の関係を大切にすることと抜け駆けはしないという暗黙のルールが出来つつあった。

まあ少女達の中でもエヴァなんかはそこを理解してるのか分からぬことだが、少なくとも自分達を排除しようとしたりしてないことから上手くいっている。

美砂はまき絵がどういうつもりでこれからどうしたいのか気になっていた。


「仲間に加えてあげたらいいじゃん。」

「桜子あんたね。」

結局現状のまま空気を読んでくれるなら問題ないが、何も知らぬ故に何かのきっかけで横島を取られるのは面白くないと考える美砂に対し桜子は仲間に加えてあげたらいいとあっさり言い切る。

ある意味直感で生きてる桜子は何処か横島に似ていて過程やら段取りをすっ飛ばす癖があった。


「どのみちマスターと一緒に居るなら普通に付き合っていくのは無理なんだし一人増えるくらいいいじゃん。」

「普通にって……。」

それは少女達も少しずつ考えていたことであるし一番無難な選択肢なのだが、話をしていた美砂や夕映のみならずあやかや千鶴など周囲に居て聞いていただけの少女達も思わず桜子に視線が集まる。

横島に抱き付いたりと一番スキンシップを取っている桜子が、すでに普通に付き合ってことを考えてないのは初めて明言したことであり流石に驚いていた。


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