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その二

「不老不死の錬金術師ね。 そんな胡散臭い事言う詐欺師ならたくさん居るけど……」

「どうやら本物らしいな。 魔鈴めぐみはイギリスに留学経験がある。 ドクターカオスとはイギリスで知り合ったんじゃないかって推測だ」

カオスに関してはさすがの大樹と百合子も判断がつかない

不老不死や錬金術を語る詐欺師など世界にはたくさんいる

インチキ宗教やインチキ霊能者と共に後を絶たない詐欺の一つであった


「忠夫のGSとしての評価は?」

カオスに関しては判断を保留した百合子は横島の状況に話を移す


「映画の影響で人気が先行してるから表立っての評価は知られてないが、GS協会内部ではなかなか評価が高いようだ。 若手の中だと一番の評価だな」

大樹の説明に考え込む百合子だが、どうしても報告書と息子の姿が一致しないことに悩んでしまう


「忠夫の周辺は思ったよりずっとしっかりしてたよ。 周りの騒ぎに一線を引いた姿勢を貫いているし、学校にも問題無く通っている。 あれだけ人気があるのに女関係も綺麗となると、俺の息子じゃねえな」

あまりのまともな報告書に大樹はつまらなそうである

大樹としては、若いのだから多少の無茶やハメを外すくらいの方が好きなようだ


「忠夫がそんなしっかりしてる訳無いわ。 やっぱり魔鈴めぐみの影響かしら?」

「多分な。 その魔鈴めぐみだが、経歴にも事務所の経営もつまらんほど問題が無い。 逆に美神令子には面白いほど問題が出て来たよ」

「美神令子って、前のバイト先の? 今の忠夫に関係無いでしょう?」

二人の会話は魔鈴から令子に向かう

横島の変化や成長の原因を魔鈴だと考えていた百合子だったが、大樹の話は何故か令子に変わっていた


「それがあるんだ。 美神令子はかなり危険な人間だったんだよ。 暴力団やマフィアなんかとの付き合いもあって、かなりの違法行為もしてるようだ。 政財界にも金が流れてるし、随分裏社会に名前を売ってるよ」

ざっと調べた令子の報告書は、大樹ですら驚くほど魔鈴とは真逆の結果である

まず目立つのが豊富な資金、その詳細はクロサキですら調べられなかったほど令子の警戒は厳重だった


「凄いわね。 これだけ派手にやれば、逆に安全でしょうね」

報告書を見て思わず感心してしまう百合子

あまりにあちこちと関わっている為、逆に裏社会に関わり過ぎて表沙汰に出来ないほど令子の行動は凄かった

それこそ、全て表沙汰にすれば日本は大混乱に陥るだろう


「忠夫はどうも上手く使われてたらしい。 時給255円だったそうだ。 しかも脱税の片棒を担がされてた形跡がある」

報告書では横島の時給が二重構造であり、実際には横島にかなりの給料が渡っていた事にして脱税していた形跡を発見していたのだ


「全く… 美人に騙されるなんて誰に似たんだか…」

話を聞き呆れてながら睨む百合子に、大樹は冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべる


「美神令子は各所から警戒されてるよ。 あまりに大物過ぎて手は出せないが、放置も出来ないらしい。 知らなかったとはいえ、忠夫は辞めて正解だった訳だ」

この時、大樹と百合子は横島を放置していた事を後悔し始めていた

結果的に現在は関係無い令子だが、関わるにはあまりに危険な人物だと判断しているのだ

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