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白き狼と白き狐と横島

「それと愛子。 ついでに言っちまうけど、俺はお前にも学校の外の世界を知って欲しいと思ってる。 今は学校に居て問題はないけど、校長が変わればわからないしな」

考え込むタマモとシロに続き、先程から戸惑いの隠せない愛子にも横島は自分の考えを語り出していた

愛子の現状は素晴らしいし幸せかもしれないが、いつまであの学校に居れるかはわからないのだ

数年おきに代わる校長の考え方によっては追い出される事も十分有り得るし、将来的に考えと愛子も外を知る事が必要だと横島はずっと考えていたのである


卒業式の少し前、卒業していく横島達とは違い学校に残る愛子は学校の外を知らないと言っていた

横島はあの時から漠然とではあるが、考えていた事である


「横島君……」

「今なら俺やピートやタイガーが力になれるだろうし、タマモやシロも居る。 お前が外を知るにはいい機会だと俺は思うんだよな」

初めて聞く横島の真意に愛子は胸が熱くなる思いだった

肝心な事は何も言わない横島だが、実は自分をしっかり見て考えていてくれた事に信じられないほど胸が熱くなり涙をこらえるので精一杯である


「いつからそのつもりだったの?」

しばしの沈黙を破ったのはタマモだった

ずっと近くに居たタマモですら、横島がそこまでいろいろと具体的に考えてるとは思わなかったのだ


(まさか、最初からそのつもりでみんなを集めたの?)

タマモは思わず鳥肌が立つ思いである

卒業式のあと横島は、久しぶりにみんなを集めて騒ぎたいと言い出してあのメンバーを集めていた

横島は詳しい真意を話さなかったが、タマモはあれが令子との決別と新しい人生の区切りに横島がみんなを集めたと思っていたのだ

しかし現状を考えると、それ以外にも意味があった予感を感じている


「お前らをGSから離す事は、結構前から考えてたかな? 細かい事は魔鈴さんと相談したから、魔鈴さんのアイデアがほとんどだけど」

少し照れたように笑って話す横島だが、タマモはそんな横島を見て再び考え込んでいく


タマモとシロに人間社会を教えると言う意味では、卒業式を見学する事や店の手伝いなど細かい部分はほとんど魔鈴が考えていた

一応横島も考えていたのだが、基本的に常識に疎い横島なだけに魔鈴が修正しているのだ

(やっぱりどこまでが考えた行動かわからないわ)

横島が予想以上に考えてる事はわかったタマモだが、実際にどこまでが計算された行動なのかはわからない

そもそもタマモとシロの将来と愛子の将来を、始めから一緒に考えていたとは考えにくいのだ

それにタマモが横島を信頼したのは偶然の出来事だったのだし、あれが計算だとは思えない


(本当に馬鹿よね…… 私達の心配する余裕なんてないクセに)

精神的余裕のない横島が、自分達の事をずっと考えていた現実がタマモには素直に嬉しかった

だが嬉しいと同時に、明らかに一人で抱え込み過ぎな現状には危機感も感じてしまう


(私には何が出来るのだろう……)

横島に考え過ぎるなと言っても無駄な事を、タマモは理解している

そんな現状で自分が何をするべきか、タマモは静かに考え込んでいく


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