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二年目の春・5

「今年もレストランか。 去年上手く行きすぎてハードル上がってるよな。」

一方横島は厨房にてこの日の夕食を作る木乃香とのどかに料理を教えていたが、正式に今年の麻帆良祭にレストランをすることが決まったことでメニューに頭を悩ませていた。


「メニューを考えるのは大変やね。」

昨年横島は幾つかメニューを開発したが、それなりに評判になりはしたものの最終的に話題になったのは麻帆良カレーのみだった。

他には味つきポテトは現在も雪広系ファーストフードや学園の食堂棟では販売していて地味に続いているが、ポテトに味を付けること自体が元々日本のファーストフードではあまり見掛けないが海外ではそれこそあった物で、雪広系ファーストフードで味つきポテトが好評なのを知ると他社が追従する形で期間限定でフライドポテトに味やソースを付けた商品を出すなどしたので話題性とオリジナリティーは今一つになる。

まあそれを言うならば元々昨年の麻帆良祭のメニューはこれほど話題になることを見込んだ訳ではなく、中学生に作れて他の学生の屋台にない物をと考えた程度なので麻帆良カレーの成功は本当に偶然なのだが。


「プロの商品開発の人も当たらないことがよくあると言ってましたよ。 目玉になる料理となると簡単にはいきませんよね。」

ただ木乃香やのどかは料理を学んだり麻帆良カレーの仕事を通じて昨年はあまり気付かなかったメニューを考える大変さを今年はよく理解していて、いくら横島とはいえ大変だからと先程から一緒に悩み考えていた。

しかし飲食の方向性も決まらぬうちにはなかなかメニューを考えるのは難しく、今のところはとりあえず考え始めただけという段階になる。


「いっそ麺類でも考えてみるか? 日本の国民食といえばカレーとラーメンだろ。 カレーは去年やったし。」

「ラーメンは大変やないん? 甘い物とかはどうやろ?」

「丼物とかは……。 やはりご飯はみんな好きですし。」

結果として横島も木乃香ものどかもまずは思い付いたことをそのまま口にしているが、最低限のアイデア以上の何かがある訳ではなく本当に言うだけであった。

クラスでは昨年同様の薄利多売にするかメイドカフェのような何かしらの付加価値を付けた別の路線で行くか意見が分かれいるものの、横島達は去年のこともあり基本的に薄利多売の方がいいと考えている。

実のところ麻帆良祭での典型的な失敗の一つはあからさまな利益目的のイベントや出し物であり、欲を出して利益確保しようとして大成功した例はあまりない。

もちろん大学部のサークルなどでは過去に三日間で数千万を稼いだというような驚異的な前例もあるにはあるが、それは準備期間や投資資金もそれなりに使っているので数千万がそのまま利益になる訳ではない。

ただまあサークルなんかだと当然ながら学生が任意で働くので人件費がかからなく、その分サークルの利益として残りやすいことは確かだったが。


「丼物はおきゃくさんの回転率も早いし作るのも簡単に出来なくもないし考える価値はあるか?」

そのまま夕食の支度が終わるまで話は続くが普通の中学生でも作れるとなると選択肢は限られてしまい、この日の話に出た中ではのどかが提案した丼物なんかがいいかという話で終わることになる。

横島としてはラーメンでもと思い付いたものの、先日大学部近辺で食べたサークルによるラーメン屋台の味を思い出すと対抗するには大変だなと思い他のメニューを考えることにした。

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