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その二

突然だが、ここで話は数ヶ月前に戻る

横島と魔鈴の香港映画がアジアで大ヒットしていた頃、その評判は遥かナルニアの地にも届いていた


「美人GSと高校生GSが香港で銀幕デビューねぇ…」

横島と魔鈴の映画の情報が書かれた雑誌に目を通す百合子は、胡散臭そうに雑誌を読んでいく

中にはこれを機会に日本の芸能界でデビューすると言う噂や、ハリウッドデビューの為の第一歩だと書く週刊誌もあり、かなり噂が噂を呼んでいる

しかし横島を最も良く知る親なだけに、納得がいかない部分もあった


「あなたが前に会ったのはこの人なの?」

羨ましそうに横島と魔鈴の写真を睨む大樹を、百合子は睨みつけ問い掛ける


「いや、違う人だ… 俺が会ったのは美神令子と言うGSだ。 美人なのは変わりないがな」

前回、令子を口説いたことが百合子にバレてお仕置きされた大樹は、冷や汗を流しながら答えた


「GSになったのも映画に出たのも報告が無いのは問題ね… いったいどういうつもりかしら」

横島に現実の厳しさを教えて、ナルニアに連れて行くために仕送りを切り詰めた百合子の思惑は見事に失敗している

加えて学生の身でありながら親に相談も無くGS免許を取得して、映画にまで出演したその結果に百合子は苛立ちを隠せない


「しかし、お前が自分で稼げって言ったんだろ?」

妙に苛立つ百合子にビビる大樹だが、男ならでかい事をやるのは正しいと思う

それにこっちから突き放しておいて成功したからダメだと言うのは、あんまりだと思っていた


「わかってるわよ! でもあの忠夫がこんな短期間でこうなるなんておかしいのよ!!」

自分の予想とまるで違う結果に納得がいかない百合子は、息子の変化を心配しているようだ


「まあ、落ち着け。 とりあえず様子を見よう。 別に悪い事してる訳じゃないしな」

結局この時は知らないふりをして様子を見ることで収まった

大樹も百合子も息子の変化と成功に、喜びと不安の両方を感じているのは確かである



そして時は一週間ほど前に進み

この数ヶ月の横島の行動などの報告書を読む百合子は、相変わらず微妙な表情のままだ


「現代の魔女、魔鈴めぐみ…」

「その世界じゃ有名人らしい。 失われた魔法を再現しているスペシャリストだそうだ。 忠夫のGS試験後に弟子にして事務所を開設。 実際は弟子と言うよりパートナーみたいだがな」

無言で話を聞いている百合子に説明する大樹だが、横島の環境には驚きだった


「次に事務所のもう一人のGSだが、名前はドクターカオス。 この人もまた有名人だそうだ。 ヨーロッパの魔王なんて呼ばれ方していて、千年は生きてる錬金術師らしい。 特にヨーロッパでのオカルト業界での影響力は今も健在で未知数。 ここ百年ほどは死亡説も流れたほど動きが無かったらしいが、何故か魔鈴事務所の一員になってる」

「本当なの?」

無言だった百合子だがカオスの話には流石に驚きを隠せず、どこまでを信じていいかわからない


「本当らしい。 最も、ドクターカオスに関しては良くわからないと言うのが結論だ。 不老不死で人工霊魂を持つアンドロイドを作ったのは有名だが、後の経歴は一切不明。 何故日本に行きGSをしてるのかも不明。 まあ、忠夫と同じ試験でGS免許を取得した事から判断すると本物だろうって事だ」

報告書と言うにはあまりにお粗末な結果だが、カオスに関しては流石のクロサキも調べられなかったらしい


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