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白き狼と白き狐と横島

(あの時の事、ショックだったのね)

アシュタロス戦で横島が人類の裏切り者として報道された時の事を、愛子はふと思い出す

マスコミのテレビや取材が学校に殺到したと同時に、クラスメート達は横島を人類の裏切り者として誹謗中傷したのは記憶に新しい

中には信じていた者も居たのだろうが、元々学校にもロクに来ない横島を率先して庇う者はいなかった


その後マスコミによる訂正報道がされると、クラスメートは手の平を返したように信じていたと態度を変えている

マスコミも訂正報道の前は言いたい放題だったが、訂正後は横島に関してあまり触れられる事はないままだった

少し余談だが、この報道の偏りの裏には横島にスポットを当てたくなかった美智恵の情報操作や圧力があったのだが、それを知る者はいない



「少し話が逸れたな。 俺が言いたかったのは、シロとタマモを人間と妖怪の狭間に置きたくなかったんだ。 あんな想いをするのは俺達だけで十分だからな」

あまり関係ない話をしたと苦笑いを浮かべる横島だが、誰も笑える事ではなかった

横島の中にある人間不信の象徴とも言うべき出来事だし、あの時の横島やルシオラの苦悩を思うと笑えるはずがない


「お前達の未来はお前達が自分で決めればいい。 ただ俺としては、選べる未来は増やしてやりたかった。 愛子やピートだってそれぞれに人間と共存しようとしてる。 俺は特に愛子の生き方はお前達に知って欲しいと思ってる」

「えっ……」

タマモとシロに自分の考えを話す横島から、予期せぬタイミングで名前を出された愛子とピートは驚き横島を見つめる


「愛子は凄いやつなんだ。 学校と言う限定はあるけど、人間と対等に共存してる。 中には妖怪を差別するような奴も居るだろうけど、対立する事なく生きてる。 俺なんかよりよっぽどクラスに馴染んでたしな」

笑って褒める横島に、愛子はどう反応していいかわからないままだった

元々横島と愛子が真面目な話をする事自体ほとんどなかったし、愛子の事を横島がどう考えてるなど話した事があるはずがない


そのまま横島は愛子との出会いから現在までを語っていく

一度は問題を起こしたにも関わらず、その事を謝って学校で生活を始めた事など、横島から見た視点ではあるがタマモとシロにとっては驚くべき内容だった

愛子が学校で人間に混じって生きてる事は以前から知っていたが、一度問題を起こしていた事やクラスメートと対等に授業を受けてる事などは二人の想像以上である


(それは違うわ。 私がみんなと友達になれたのは、横島君やピート君やタイガー君が居たから……)

横島は愛子が自分の努力と生き方で現在の立場になったように言うが、愛子から見れば現在の状況は奇跡に近いのだ

それに愛子が一般のクラスメートと馴染んだ一番の理由は、愛子を恐れたり差別しなかった横島の態度が大きい

そしてタイガーやピートが転校して来る頃には、愛子を差別する者はほとんどいなかった

そんなたくさんの出会いの結果だと、愛子は考えている


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