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二年目の春・5

「はい、タマちゃん焼けたえ~。」

「このおにく、おいしいね!」

この日はいつもは居ない亜子が居たせいか久しぶりに支払いの件が話題に上るが、一方では動物園で騒ぎ走り回りその後には買い物までしていたせいかタマモはお腹ぺこぺこだったらしく木乃香が焼いてあげたお肉をパクパクと食べている。

流石に危ないからと自分では焼かせてもらえないタマモであるが、焼けるお肉をじっと見つめて待つほどにお腹を空かせているらしい。


「まき絵さん、明日は選抜テストなのでしょう? 大丈夫なのですか?」

「わかんない。 でも上手くやれる気がする!」

お肉の焼ける香ばしい匂いに釣られるようにみんな焼肉を焼き始めていくのだが、相変わらずお人好しのあやかは明日に迫った部活の選抜テストを前にしたまき絵のことを気にしていた。

しかし彼女はすでに吹っ切れたように気持ちの切り替えが出来ている。

だがその反面で本来の歴史でネギによるエヴァの弟子入りにちょっとだけだが関わり、ほんの少しだけ成長するはずだがこの世界ではそんな精神的な成長はあまりしてなかった。


「ポジティブですわね。」

「それでいいんだよ。 人にはそれぞれ向き不向きなんてのがあるからなぁ。 まき絵ちゃんはまき絵ちゃんのやり方でやりゃあいい。」

結果として当初の悩みである幼さや子供っぽさが全然変わってないことにあやかやのどかなどは不安を覚え大丈夫なのかと横島に視線を向けるも、横島はそもそも無理に大人にしようなどとは初めから全く考えてないのでまき絵の現状は横島の指導の結果ともいえる。

あえて口に出して言うことはしてないが、そもそも横島は二ノ宮という教師を知らないし知らない以上は信じてない。

別に悪い教師とも思ってないが元々横島は教師という存在を最低限の勉強を教える仕事をしてる人だという以上には考えてないのだ。

そういう意味では横島はまき絵のことに関しても根本的に二ノ宮の指導が未熟なだけなのではと思っている。

まあ刀子からすると教師は教師で大変であり横島のような相手に合わせた指導が出来る教師なんて麻帆良学園全体でも一握りしか居ないと言いたいだろうが。


「結果がどうなるかは分からんが無駄にはならんと思うぞ。」

最終的にまき絵が納得してるのだからと周りの少女達は見守るしか出来ないが、横島が畑違いの新体操でどんな結果に導くのかは興味があった。


「合格したいけど一生懸命やったから後悔はしないと思う。 それにマスターとの練習楽しかったからダメでもこれからも練習すればいいだけだもんね。」

そして肝心のまき絵であるが、彼女はここ数日の横島との練習やその前後の関わりで確実に心境の変化が起きている。

一つは短い期間だがやれることはやったと自信が持てるようであるし、もう一つは結果がどうであれ今後も時々は一緒に練習を出来ればいつか結果が出ると思えることだろう。

一つ目の自信はある意味横島の狙い通りで二つ目の今後のことは予想外のことだ。

選抜テストを到達地点ではなく通過点だと思えるようになったのは僅か数日にしては上出来の成果となるが、同時にまき絵に今まで以上に懐かれるのは当然横島は想定してない。

結局横島にとっては何故自分の周りに女の子が増えるのか未だに理解してないことが一番の誤算であり、そんな横島の誤算が周囲の少女達やまき絵や亜子の今後にも密かに影響を与えることになる。


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