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その二

フェンリル事件をなんとか解決した横島達は、忙しい中でつかの間の平和な日々を送っている


そんなある日、いよいよ銀一が主演のドラマ『踊るGS』が放送開始していた

事前にかなりの話題になった影響からか、初回の平均視聴率は28・7%の驚異的な視聴率を記録する

これは未来での同じ初回の視聴率よりも高く、明らかに修学旅行での横島の騒動がドラマの宣伝になった影響があるようだった


「不思議な気分ね。 横島をテレビで見るなんて…」

テレビを見ていたタマモは未来での横島を思い出し、複雑な表情で見ている

未来ではアシュタロス戦後しか知らなかったタマモだが、横島の立場の変化は極端すぎると感じていた


「先生が人気者になるとは… 生き方の違いでこれほど歴史とは変わるものでござろうか…」

それは横島を師と尊敬するシロですら、現状は不思議だと思う

元々良く知れば人に嫌われるタイプではないし、自己不信でかなり損をしていたのは理解しているが、それでも内面の変化だけでこれほど歴史が簡単に変わるとは思わなかった


「兄ちゃんと姉ちゃんが見たいなら映画もあるよ?」

そんな不思議そうなタマモとシロの様子に、何も知らないケイは以前の香港映画のビデオを持って来る


「それは見たいでござる!」

最近すっかり仲良くなった三人は、並んで映画を見ることにした

そして三人の後ろでは、微妙な表情をした横島とクスクス笑う魔鈴が居る


「自分がテレビに出てるってだけで信じられんのに、銀ちゃんと共演するとはな~」

自分がテレビに映るたびに、横島は恥ずかしいような気持ちになる

まして弱く情けない自分を知るタマモとシロが真剣に見てるのだから、より複雑な気分だった


「すっかり人気者ですからね。 全てが終わったら、今度は俳優でも目指しますか?」

「いや…、それは無理だろ~」

珍しくからかうような魔鈴に、横島は恥ずかしそうに否定する

未来ではコックやウェイターなどのレストラン関係の仕事が本職だった横島だが、この時代でも同じにする必要は無い

魔鈴は案外そんな未来もアリかと思っている


そして次の日、横島のクラスでは昨日の踊るGSの話題でもちきりだった


「本当に私達出てたわね~」

「お父さんとお母さんも喜んでたわ!」

一緒に出演した愛子と加奈は、朝からテンションが高くたくさんのクラスメイトに囲まれている

横島のついでだがしっかりとドラマに出演した二人は、他の女子からかなり羨ましがられていた



そして都内某所の撮影スタジオでは今も踊るGSのドラマの撮影に忙しい中で、関係者が喜びの声を上げている


「近畿君、聞いたかい? 初回はかなり数字取れたらしいよ!」

「いろいろ騒がれたからな~ 問題はこれからやろ? つまらなかったらあっと言う間に数字落ちるで~」

監督が機嫌良く昨夜の初回の話をすると銀一も笑顔で喜んだが、喜び以上にこの先も頑張らなければならないとやる気で満ちていた

いいドラマにして、これを機会に本格的な俳優になりたい

そんな目標の元、銀一は踊るGSの撮影を続けていく



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