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あの素晴らしい日々をもう一度

「あっ、メドーサ」

「なにっ!?」

「嘘だよ。 バーカ」

「貴様っ!!」

一方横島と陰念の試合だが、相変わらず結界を破れない陰念を横島が分かりやすく挑発し始めていた。

無論横島が自分で挑発を始めた訳ではなく心眼の作戦である。

最初こそ嫌々挑発していた横島だが、途中から調子にのったらしく割とノリノリであった。

ガラの悪い不良のような陰念を、一方的にいたぶれることが少し楽しくなったらしい。


「このまま負けたらメドーサ怒るだろうな~ お前殺されるぞ。 あいつ前に手下にした竜族を簡単に捨て駒にしたしな」

「ぶっ殺す!!」

審判や観客の見てる前でメドーサの名前で挑発する横島も横島だが、陰念はそれに一々反応してキレては横島に攻撃するが当然無駄な努力である。

そんな二人の会話は当然記録されており、陰念は既にGS協会関係者にメドーサとの関わりを証明したも同然だった。


「分かったよ。 貴様も美神令子も小竜姫も皆殺しにしてやる。 もうGS試験なんてどうでもいい」

端から見たら喜劇かコメディにも見える横島と陰念の試合だが、陰念はぶちギレ過ぎたのか逆に冷静な表情になると自身の霊力を高めて魔装術を展開する。

それは横島から見ると本物の化け物のようであった。


「おい、心眼なんだよあれは! 聞いてないぞ!」

「あれは魔装術だ。 どうやら向こうもメドーサと契約していたらしいな」

「けっ契約ってどうすんだよ!!」

「心配するな。 契約のランクはこちらが圧倒的に上だ」

本物の化け物のような姿に変わった陰念に横島はやはりうろたえてしまうが、心眼は予測の範囲内だったのか冷静である。

しかも未熟な魔装術を使ったことで、心眼はようやく陰念にはこれ以上奥の手がないことを悟った。



「霊波が共鳴している? 横島さん、やはり貴方は……」

そして自分の意志に逆らって試合に出た横島を見守るしか出来なかった小竜姫だが、この試合が始まってから自身の竜気と横島の霊力がほんの僅かだが共鳴していることに気付く。

それは明らかに小竜姫との契約による影響だったが、この時点で横島の霊力が竜気と共鳴し始めるほど活性化するのは小竜姫の予想を超えている。

竜気と霊力の共鳴は小竜姫が与えた契約の最終奥義とも言えるほどの難易度であり、ほんの僅かな共鳴でさえも現状の横島に出来るレベルではない。


(これが才能なのでしょうか? それとも……)

霊力の同調は未来の世界で横島と令子も使ったが、あれには様々な条件や相性が必要であり文珠を使っても簡単ではない。

小竜姫は自身と横島を対等にするため、普通は神族が人間相手には絶対に使わない契約を用いている。

霊力の量や質の差を越えるには必要な契約だったが、その契約の本質は互いの心を一つにすることが最も必要になるのだ。

そして現時点で横島と小竜姫の心は、力が共鳴するほど一つになっている事実に小竜姫は言葉に出来ないほどの喜びと後悔を感じてしまう。


(私はもう戻れないのかも知れません)

横島を守りたい。

例え全てが終わった後に自分が処分されても。

そんな小竜姫の心と、小竜姫に笑ってほしいと一歩を踏み出した横島の心はこの時確かに共鳴していた。



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