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二年目の春・5

翌日はゴールデンウイーク目前の金曜だった。

まき絵の新体操部の大会選抜テストは翌日であるが、ゴールデンウイーク前日のため中等部全体が少し浮かれたような雰囲気になっている。


「まあ、そんなとこじゃろうて。」

そんなこの日女子中等部の学園長室で仕事をしていた近右衛門の元には学園側と生徒会で検討した超と葉加瀬の表向きの処分が内々に伝えられていて最終判断を仰がれていた。

二人の問題で重要であったコンピュータを使用した不正アクセスと出所不明の未承認資金を勝手に学園での研究に費やしたことなど、本来ならば警察に逮捕されて退学や懲戒免職でもおかしくないレベルで超鈴音は学園と生徒会の調査に判明した疑惑を全て認めていた。

しかし学園側は未成年の二人の監督不行き届きが学園側にもあったことを認めていて、彼女達の中等部の担任である高畑や大学部での教授や講師など関わった大学部関係者に関しても今後それぞれ調査して処分を行うことも決めている。

肝心の二人の処分に関しては超鈴音が未来の理論と技術を幾つも公開した影響で、世界最先端の研究が幾つも進められてる大学部での研究環境は結果的に守られるというかこの程度では超鈴音を排除出来ない物も少なからずあった。

大学部の教授などには超鈴音の理論や技術を元に研究している者も居て、それが未来から持ち込んだカンニングだと言えない以上はこの世界では超鈴音の発明として認めざるを得ない為に超鈴音を排除した時の麻帆良学園と日本の損失は馬鹿にならないものになるのだ。

正直なところ学園側も生徒会も研究環境を奪うような処分をすれば彼女達の頭脳が海外に流出することが確実だろうと見ていて、あまり思いきった処分が出来なかったという事情もある。

それでも二人の態度次第では厳罰をという声はあったが超も葉加瀬もあっさり疑惑を認めて反省したのでは厳しい処分をするのは利に叶わないものだった。

結果として二人には二週間の謹慎と大学部での研究室の使用ルールの厳格化に加えて、複数の教授や講師による監督指導を行う環境を整えることで事実上の研究環境は守られることになっていた。

もちろん学園側の監査も不定期で入ると環視体制はそれなりに厳しくなっていたが。


「結局彼女は天才として歴史に名を残すのですね。」

最終的に近右衛門は報告書として上がってきた超達の処分を承認して刀子にもその内容を伝えたが、刀子は分かっといたこととはいえテロリストを天才と偽り歴史に残さねばならぬことにわだかまりが消えず何とも言えない表情をする。


「仕方なかろう。 タイムマシンの存在を知られるよりは遥かにマシじゃ。 あれは何があっても世には出せん。」

一方の近右衛門も今回の処分は無難ではあるが仕方ないと考えてるらしく、タイムマシンの存在や未来関連の情報や知識を秘匿するには仕方ないと思うしかなかった。

タイムマシンはどう考えても騒動の種にしかならずに人間が持つには少なくとも百年は早いと思う。


「このまま反省して大人しく生きてくれればいいのですが。」

「次がないのは超君は理解しとるはずじゃ。」

やはり超鈴音という爆弾を抱えたままの結末は刀子のみならず近右衛門にも不安を抱かせることになるが、本当に仕方ないとしか言えないのが現状だった。


「話は変わるが横島君が新体操を教えてると聞いたが……。」

「ええ。 そのようです。 結構楽しんでるようですよ。」

近右衛門も刀子もため息が出てしまい重苦しい空気となるが、近右衛門がふと孫の木乃香から聞いた横島が今度は新体操を教え始めた話題を持ち出すと刀子は半分呆れたように横島の様子を語る。

超鈴音の不安などない横島の自由な様子に近右衛門も刀子も何処かホッとしていた。

実はあんまり深く考えてないだけだと二人もそろそろ理解してはいるが、結局超鈴音は土偶羅の監視から逃れられないのが横島が深く考えない理由であり二人もそれがあるからひとまず安心出来るのであった。

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