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白き狼と白き狐と横島

その後納得がいかない西条は横島に言いたい事がたくさんあったが、それとは別に現実問題として降霊やシロとタマモの協力が不可能なのは悟る


「わかった。 無理を言って済まなかったね」

魔鈴に一言告げると西条はそのまま店を後にしていく

正直西条には横島の考えや感情は、理解出来ない部分が多い

最後に何故魔鈴が止めたのかすら理解してないのだ


(千年後の妖怪の幸せか…… 考えた事もなかったな)

西条が理解したのは、横島がタマモとシロの遥か未来を考えていた事である

今の現実を生きる西条にとって、自分が生きてもいない千年後など考えた事もない

考えてもせいぜい数十年先のオカルトGメンの未来を考える事くらいだ

まして妖怪の未来など考える対象に入ってなかった


(人よりも妖怪が大事か、モノノケに好かれやすい横島君らしいな)

結局西条にとって横島は、変わった事を考える変人でしかない

千年というどうなるかわからない未来のために、同じ人間を見殺しにするなど西条には考えられないのだ

極論で言えば横島は見知らぬ人間よりもシロとタマモを選ぶが、西条は二人よりも見知らぬ人間を選ぶ

比較的妖怪に理解を示す西条ですらそれが当然だった

いやオカルトの専門家であるGSのほぼ全てですら、人間と妖怪を比べれば人間を選ぶだろう

人間の都合だけで退治される妖怪など星の数ほど居るし、GSがいちいちそんな妖怪を助けたり退治して罪悪感を感じるなどまず有り得ない

人と妖怪などの人外には、それだけ途方もないほど大きな溝があるのである


「西条先輩、すいませんでした。 ただ失礼ついでに少し話しておきたい事があります。 これから先、私は多分オカルトGメンに協力する事はないでしょう。 理由は美神美智恵さんが知ってるはずです」

横島を落ち着かせた魔鈴は西条を見送りに店の外に出ていた

店の前で少し不愉快そうな西条に頭を下げる魔鈴だが、言いにくそうに今後オカルトGメンに協力する事はないと告げる


「えっ!? 魔鈴君!?」

不愉快そうな西条は一気に驚き目を見開く

西条としては魔鈴に拒否される理由などないのだ

横島との喧嘩は今に始まった事じゃないし、昔と同じ感覚なため特に問題としてなかった


それに美智恵の名前を聞いたが、アシュタロス戦以降オカルトGメンが魔鈴に依頼した事がないためこちらも意味がわからない


「失礼ですが、西条先輩は知らない事が多いようです。 美神美智恵さんに事情を聞いた方がいいと思います」

本当に何も知らない様子の西条に、魔鈴は内心少し呆れていた

横島に興味がないと言えばそれまでだが、あまりに何も知らない

それに横島に対して未だに昔と同じ対応をされるのは、正直魔鈴にとって迷惑でしかなかったのである


(これ以上横島さんを傷付け、人間不信を悪化させるのは止めさせなければ…… 互いに会わない方が幸せなのかもしれません)

GS試験の時に続き今回もナチュラルに横島の心の傷をえぐる西条に、魔鈴はもう会わせない方がいいと考えていた

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