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その二

漆黒の闇しか見えない亜空間に周りの全てが吸い込まれていく姿を、令子や唐巣達は立ち止まり見つめていた

フェンリルの攻撃すら吸い込むその魔法に、恐怖を感じ見ている事しか出来ない


一方フェンリルの体を抑えていた文珠が消えると、フェンリルそのものが宙に浮いていく

必死にもがき抵抗するフェンリルだが、しがみつくことも出来ずに暴れるだけである


「さらばだ犬飼……」

そんなフェンリルの姿を見てジロウは静かに呟いていた

その表情は複雑で単純に判断は出来ないが、喜びではないことは確かである

共に長い年月を生きた仲間だった犬飼、最早許すことは出来ないが、それでも割り切れない感情があるようだった



「グォォォーン!!」

今までで一番の叫び声を上げたフェンリルは、そのまま漆黒の闇の中へ消えて行く

あれほど圧倒的強さを誇り全てを破壊すり勢いだったフェンリルだが、最後に見えた姿はあまりに切ない姿に見えていた


「どうやら拙者達の出番は無かったようでごさるな」

「今の私達じゃ、足手まといにしかならないわ。 決戦までにはなんとかしないと…」

「やはり戦うつもりでござるか?」

「シロだってそのつもりでしょ? もう、横島のあんな姿見たくないもの。 それに…、私も会ってみたいわ。 ルシオラって女性に」

遠く離れた場所で、フェンリルの最後を見て新たな決意を固めていたのはシロとタマモだった

誰になんと言われようと、自分達も共に戦う

まだ幼い体のシロと弱い力しかないタマモだが、その決意だけは決して揺るがないように見える

二人は誰にも気付かれないように、静かにその場を後にして行く



「魔鈴君、大丈夫か!」

そしてフェンリルを追放した横島と魔鈴の元には、カオス達や西条達が集まっていた


「ええ、私は大丈夫です」

走って来た西条にホッとしたような笑顔を見せた魔鈴だが、内心は複雑である

結果的に亜空間に追放して無事に解決したが、救われるはずだった犬飼は救われなかった

その現実が魔鈴の心に深く突き刺さっている


「ちょっとカオス!! 最初の精霊石のミサイルは何なのよ! なんであんたそんな物持ってるの!!」

思考の渦から魔鈴を現実に引き戻したのは、カオスに突っかかる令子の声だった


「ワシが何を持ってようがおぬしに関係無かろう。 無論、ワシの技術は誰にも渡すつもりは無い」

凄まじい剣幕で迫る令子を、カオスは涼しげな表情でかわす

こんなお金の絡む時の令子の思惑など誰でもわかるし、もちろんカオスは令子に人造精霊石を渡すつもりなど全く無い



「それで、フェンリルはもう大丈夫なのかね?」

相変わらずな令子を唐巣は見ないようにして、魔鈴と横島に問い掛ける


「はい、フェンリルは亜空間に追放しました。 戻ることは不可能でしょう」

魔鈴の返事を聞き、唐巣・西条・エミはホッと一息をつく

あまりにスケールの違う戦いと結果に驚きが収まらない一同だが、みんな無事に事件が解決したことに心から安堵していた


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