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白き狼と白き狐と横島

「先生……」

「横島……」

そして当の本人であるシロとタマモの二人は、横島がそこまで先を考えていた現実に言葉を失っていた

横島が先の事やいろいろ考えているのは薄々感づいていたが、それがそれほど遠い未来だとはさすがに思わなかったようである


(これが、本当にあの横島君か?)

未だに昔の横島である馬鹿でスケベでどうしようもないイメージが消えない西条は、横島が真剣に二人の将来を考えている事に驚きを隠せない

他人の将来どころか、自分の将来を犠牲にしてでも令子を求めていた頃しか知らないのだから仕方ないが……


(何が彼を変えたのかは知らないが、あまりに常軌を逸した考え方だ)

自分の知る狭い範囲の常識や価値観が絶対的な西条には、横島の価値観は常軌を逸したものに感じていた

二人の将来を考え心配してると言えば聞こえはいいが、言い方を変えれば同じ人間を全く信用してないとも言える

西条が知る横島ではそこまで考えるなど有り得ないし、何故同じ人間を信用しないのかも理解出来ない


「俺はアシュタロスとの戦いで隊長に人類の裏切り者として捨て駒にされたたんだからな。 オカルトGメンを二度と信用しない。 オカルトGメンは絶対シロとタマモを道具や式神のようにするからな」

自分が語った疑問に対して西条が返事をしない事に苛立ちを募らせた横島は、オカルトGメンを絶対信用しないと言い切る


「なっ……!? あれは先生が君の潜入中の安全のためにやったんだぞ!」

「安全? お前が何を知ってる! あの時逆天号がどんな状況だったのか知ってるのは、中に居た者だけだ!!」

横島の問い掛けには答えずに西条が語ったのは美智恵の弁護だった

しかも全て計算だったと言う西条の言葉に、横島の中で抑えようがない何かが溢れ始めている


(!!!)

その微かな横島の変化に、事態を静観していた魔鈴はハッとしたように気付く


「まずいわね」

「止めに入るでござるか?」

同じ瞬間、言葉を失うほど衝撃を受けていたタマモとシロも横島の変化に気付いていた

魔鈴達は横島の中の何かが爆発して壊れそうな気配を感じている

それが何かはわからないが、このままだと危険なのはよく理解していた


「あの馬鹿!」

その時、一番先に動こうとしたのはなんと雪之丞だった

どうやら雪之丞も同時に何かを感じたらしい


「待って! 魔鈴さんがなんとかするわ」

店に行こうとした雪之丞を、タマモが引き留めてる

出来るだけ問題を大きくしたくないタマモは、魔鈴が穏やかにこの場を収めるだろうと期待していた



「横島さん、少し落ち着いて下さい」

まるで一触即発のようなピリピリした空気の中、突然立ち上がった魔鈴は少し強引に横島を抱きしめる


「大丈夫ですから。 本当に大丈夫ですから……」

まるで泣く子供をあやすような感じで、魔鈴は横島を優しく包み込み落ち着かせようとしていた


「西条先輩。 申し訳ありませんが、今回の件に協力は出来ません。 先輩がかつて世界に逆らっても美神さんのために南極に向かったように、今の私には横島さんやタマモちゃんやシロちゃんの事が何より大切です。 私達はただ静かに生きて行きたいだけ…… わかって下さい」

横島を抱きしめたまま真剣に話す魔鈴に、西条はそれ以上なにも言えなかった



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