このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

二年目の春・4

「まったく桜子さんと来たら……。」

「いいじゃないの。 私は好きよ。 彼女みたいな人。」

朝からゴタゴタしたこの日も昨日と同じ桜公園でのんびりとお花見することになったが、あまり反省もみられずまた抱きついては横島を慌てさせる桜子のことをあやかは個人的なモヤモヤ感も僅かにあるのかため息混じりに愚痴っていた。

元々人一倍責任感が強いあやかは桜子の抱きつき癖は若干行きすぎだと感じるようだったが、そんなあやかを宥めたのは姉のさやかだった。


「でもお姉様。」

「彼女のスキンシップだもの。 誰に迷惑をかけてる訳でもないし。 横島さんも満更じゃないみたいだからいいじゃないかしら。」

桜子のそれは一種のスキンシップだとさやかは語り、横島も一応注意して困った表情を見せるも満更ではないのは見てれば分かることである。

麻帆良でも若い男女が関係に合わせた相応のスキンシップをするのは珍しくもなんともない。


「それに……。」

加えてあまり倫理やら貞操観念を堅苦しく言って、横島がここには居ない他の女に目を向けられても困るのだとさやかは考えていた。

横島が押しに弱いのは昨夜の件で明白になったと彼女は考えているし、一般論として女性に迫られて頑なに拒否出来る男性はさほど多くないという事実がある。

まして横島は独身で特定の彼女もなく資産家で魔法使いとしてもそこそこ優秀だと麻帆良の魔法関係者は噂しているのだ。

玉の輿とまではいかなくてもいいからと狙っている女はそれなりに居るし、横島本人に自覚はないがハニートラップや便宜を図って欲しいと女性が近付いてくることも実は警戒せねばならない。

木乃香を筆頭に麻帆良御三家と呼ばれる近衛・雪広・那波と親しい横島に取り入りたい人間や、隙あらば取り込みたいという組織なんかも無いわけではない。


「それに?」

「あんまり口うるさく言ってもみんな疲れるだけよ。」

思わず横島の置かれた立場を話してしまいそうになるさやかだが、横島本人が居る場所で話す内容ではないとあやかの問いかけを誤魔化して答える。

本音を言えばさやかは横島がハニートラップやら利益目的の女性に騙されるとはあまり思ってないが、誰でも魔が差すなんてことはあるし絶対大丈夫だとは言い切れないのが男女の関係だった。

実のところさやかは未だ魔法世界の危機など横島と大人達が抱える問題を知らないが、大人達が何か重大な問題を抱えてることや横島の女性問題に懸念を持ってることは気付いている。


現状ではさやかの横島に対する評価は未だに高いままであり、それは一重に横島が少女達の幸せや将来を考えてるからである。

ただ一方的とまでは言わないが、あまりに少女達のことを優先させ過ぎて与える立場ではあっても求めることが出来ない立場になるのはよくないと思う。

そういう意味では桜子のような横島の築いた距離を簡単に越える存在は必要だと考えていたようだった。


80/100ページ
スキ