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二年目の春・4

「タマちゃん、そろそろ許してあげられへん?」

「やだ。 わたしだってたのしみにしてたのに!」

さてタマモの怒りの方だが、こちらも未だ収まらずに困り果てた横島に乞われるようにハニワ兵やさよに木乃香までもがなだめていたがなかなか機嫌が直らない。


「うーん、じゃあ後で昨日の公園の温泉でみんなで入ろか。 それで許してあげような。」

とはいえこのままではらちが明かないので木乃香は少し考えてみんなで一緒に混浴することで納めようとしていた。


「ちょっと木乃香!」

「水着来てならええやん。 タマちゃんどうや?」

「……うん。」

いくらタマモが怒っているとはいえまさかの提案に少女達は戸惑う者も居たが、木乃香は水着着用での混浴でとの妥協案でタマモをなだめ少女達をも納得させることに成功する。

この辺りはタマモのことをよく知る木乃香故にタマモがしたいのはみんなで温泉に入ることであり、特に水着やタオルの着用に拘りがないことは熟知していた。


「えー! 温泉で水着着るの?」

「あんたは黙ってて。」

なお騒動の元凶の一人である桜子は水着で温泉と聞き少し否定的な声を上げるも、話が纏まらなくなるからと聞き届けられることはなかった。

横島に関してはタマモがここまで怒るとは思いもしなく仲裁に入っている木乃香達に従うしか出来ない。


「なかまはずれはやだからね!」

「ああ、分かったよ。」

最終的に木乃香達の仲裁でなんとかこの場は納まったが、横島は麻帆良に来てから最大の危機に朝から冷や汗やら何やら流してしまいどっと疲れが出ていた。

周りの木乃香達やさよにハニワ兵の協力により今の今まで子育ての大変さなんてのとは無縁だった横島は、ここに来てようやく子育ての大変さを身に染みて実感している。

普通の人間の子とは微妙に違うがタマモにはタマモなりの譲れない一線があり拘りというかワガママな部分もあったのだ。


「そう言えば今日はどうするの? 昨日と同じとこでお花見?」

「それでいいんじゃない? あの温泉でも浸かりながらゆっくり見ようよ。」

その後タマモの機嫌が直ったことで一同は朝食を食べながら今日の予定を話していくが、朝食もまた昨夜と同じく山の幸を中心とした和食で絶品だった。

土鍋で炊いた鮎ご飯は生姜や大葉などの薬味が鮎の味を上手く引き出していて、小鮎の甘露煮は醤油や砂糖やみりんなどの甘辛い味が鮎の旨味とマッチしてこれまたあとを引く味である。

味噌汁は天然ナメコの味噌汁で日頃見かける栽培物と比べると大きく味も濃い。

他には山菜の小鉢などもあり本当に山の幸朝食といった物で、ついさっきまで怒っていたタマモがそんなことなかったかのように笑顔で口いっぱいに頬張り食べていた。

食後は一晩お世話になった旅館に別れを告げるが旅館のハニワ兵達の要望でハニワ兵達と横島達の記念写真が撮られ、旅館のロビーの一角に飾られて訪れるハニワ兵達の注目を集めることになる。


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