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二年目の春・4

食後少女達は旅館のお風呂に入ることにするが、旅館のお風呂は檜の内風呂と露天風呂の二つあった。

こちらは脱衣場すら一つしかないものの、男女分けてない分だけ旅館の規模にしてはお風呂は広めとなっている。

露天風呂は隣を流れる清流と周囲の山々を見れるこれまた絶景な場所にあるが、山の夜は月や星の明かりしかなく暗いのでどちらかと言えば少し不気味なほどだ。


「いい湯でしたね。」

結局女性陣が内風呂に行ったので横島と高畑は露天風呂に入ることにしたが、共に夜の闇を怖がるタイプでもないので久し振りの露天風呂を堪能していた。

まあ入る前にタマモと桜子が当然のように横島と一緒に露天風呂に行こうとしてひと悶着あったりしたが。

闇夜の景色は必ずしもいいとは言えないものの、何だかんだと昼間は露天風呂に入りそびれただけに開放感ある露天風呂を横島も高畑も楽しんでいる。

なお浴衣に関しては人間用はここには無かったらしく急遽取り寄せた物になっていた。


「やっぱり簡単に出来ないわね。」

お風呂上がりには部屋で魔法の練習をすることにしたが少女達が使えるのは未だに最初に覚えた種火の魔法しかなく、魔力や気を感じることは元より他の魔法も一切発動しない。

次は初歩の治癒魔法を練習中であるが修得までにはまだまだ先が長いようである。

実際少女達のやる気もそこそこある程度なのもあまり進歩がない理由の一つであり、一応魔法を使えたことで練習を継続することにはなったが相変わらず熱中するほどではないのだ。

物事の優先順位は必ずしも高くないし、そんなに魔法に集中するような時間もない。


「ねえマスター、前みたいに簡単に覚えようよ。」

「うーん、まだ早いかなぁ。 あんまり即席培養みたいにすると後で融通が利かなくなるかもしれんし。」

ちなみに少女達が熱中出来ない理由には横島なら簡単に使えるように出来るという理由もあり、美砂や桜子以外は口にはしないがもっと効率的にしてもいいのではとの考えがほとんどの少女達には多かれ少なかれある。

夕映やのどかなんかも覚えるまでは効率的にして覚えた後で使いこなすように練習した方がいいのではと内心では考えてるが、横島はともかく刀子も簡単に覚えさせるのは慎重なので現状では優先順位が低いこともありあえて口に出してはいない。


「なんならもう少し厳しい修行でもしてみる? 本格的に魔法を学ぶならやることは山ほどあるわよ。」

目指せ魔法少女ではないが日々の日常でちょっと便利な魔法が使えればいい程度にしか考えてない少女達は、刀子や刹那から見るとやはり魔法を甘く見ているとも見えるらしく刀子はため息混じりに少し厳しい修行に変えようかと提案した。

エヴァに至っては横島は甘さを捨てきれずに師には向かない性格だと半ば呆れてるほどで、実際魔法を使える側でも横島と刀子やエヴァなどは考え方がまるで違う。

ただそもそもの問題として横島は魔法使いではなく魔法を使えるだけであり、厳しい修行なんてしないままになんとなく霊能者になったので根本的な価値観というか考え方はだいぶ開きがある。

日常を犠牲にしてまで魔法や霊能をやらせるなんて論外だと考える横島と、本気でやるなら多少なりとも日常をそちら側にシフトする必要があると考える本物の魔法関係者の認識の違いは大きい。


「まあまあ、当分はゆっくりやりましょうよ。」

結局横島は厳しい修行なんてまだ必要ないと言わんばかりに刀子を宥めると、あまり集中しきれない魔法の練習はそのまま続いていくことになる。

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