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二年目の春・4

「おっ、これも美味いな。 彩りもいいしやっぱ女の子は違うな。」

一方横島と高畑は先程までとは打って変わって静かなお花見になっている。

吹き抜ける風の音も聞こえるほどの静けさだが横島は木乃香達が作ったお弁当を堪能しつつ、松茸を焼いた炭火で貰った日本酒を温めて熱燗にしてちびちびと飲んでいた。

木乃香の料理は母親や横島が教えたものになるので基礎や味はそう横島と大差ないが、食材の選び方や彩りなど細かなところは個性がよく出ている。


「木乃香君か。 彼女達も変わったな。 木乃香君は箱入り娘そのものだったし、のどか君は僕にもなかなか打ち解けてくれなくてね。 夕映君は自分の世界に籠りがちだったし。」

お花見ということで春を意識した華やかなお弁当は見ているだけでも楽しめるような物だったが、高畑はそんなお弁当から少女達の成長を感じるのか少し過去を思い出していた。

今でこそかつての自分は教師としては中途半端だったと反省している高畑であるが、それでも教え子を疎かにしたつもりはないし高畑は高畑なりに教え子を見ていて指導しようとはしている。

ただ波乱の人生を歩んで来た高畑と一般的な日本人の家庭に生まれた女の子では互いに理解出来ない部分も多く、上手く行かなかったこともまた多かった。

尤も世間一般の教師と比較すると高畑は必ずしも劣るとは言えないし、寧ろ一般的な教師よりも生徒想いだともいえる。

少なくとも横島の高校時代の教師よりは遥かにマシであろう。

教師も所詮は人の子であり仕事として勉強を教えてるに過ぎず、事なかれ主義だったりと高畑のような教師と出会える確率は高くはない。

まあここで難しいのは生徒の側が必ずしもそんな親身になってくれる教師を求めてないことで、最低限のドライな教師がいいと考える子供もそれなりに居るからだろうか。


「高畑先生は真面目過ぎるんっすよね。 正直今時の日本人で教師にそんなに人生預けるほど期待してる人って多分ほとんど居ませんよ。」

木乃香達の成長と変化に喜ぶ高畑だがその表情が必ずしも冴えないのは、彼が未だに超と葉加瀬のことを引きずっているからだろう。

だが横島はそんな高畑の心中を察して教師としての理想と現実とまでは言わないが、リアルな日本の学校について少し語り始めていた。


「麻帆良学園は私立ですしいい先生多いみたいっすけどね。 正直俺が通った学校なんかはお世辞にもいい先生って言える先生ほとんど居ませんでしたし。」

幼い頃からどちらかと言えば問題児だった横島であるが、だからこそ教師と接する機会が多く差別と受け取られ兼ねない扱いをされるなど教師に全くと言っていいほど期待してない。

そんな横島からすると超達の件で心を痛める高畑はお人好し過ぎるだろうと呆れるほどであるし、そもそも超鈴音の問題は一介の教師がどうこう出来る問題ではないのだ。


「ガトウさんとか詠春さんとかエヴァちゃんも入るのかな? そんな人達と同じに考えちゃだめっすよ。 師弟関係と学校のシステムは全く別物ですから。」

恐らく高畑にとって師と言えばガトウや詠春にエヴァなんかが該当していてそんな人の影響が強いのだろうが、武術や魔法の師弟関係と学校の教師と生徒の関係は全く別物である。

刀子なんかは生粋の日本人なのでその辺りをきちんと割りきれているが高畑にはそれが出来てない。

表現が適切かは分からないがある程度割りきることをしなければ高畑自身が大変だろうと思うと、横島は高畑の真面目さも少し行きすぎかなと思う。



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