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その二

マリアが予定地点に追い込みを始めた時、魔鈴も呪文の詠唱を始めていた


「古より閉ざされし未知への扉よ……」

フェンリルの動きを予測しながら長い呪文の唱えていく魔鈴の言葉に反応するように、横島が維持している魔法陣が光りを放っていく


プシュー!!


そして地上ではマリアの放った特殊な煙幕により、フェンリルの視界はゼロになる

この煙幕もまた微量の霊力が込められた煙幕であり、視界だけでなく匂いや霊感を少しの間だけ遮断出来るのだ


いかにフェンリルに理性が無いとはいえ、横島と魔鈴はすでに高い霊力を放出しており本能的に気が付く可能性があった

横島は魔法陣の維持の為動けないし、魔鈴もまた呪文の詠唱中は無防備になる

カオス達は何としてもフェンリルに横島と魔鈴の存在を気付かれてはならない

従ってこの煙幕で時間を稼ぎ、フェンリルを封じるつもりだった


「グォォォーン!!」

煙幕が気に入らないらしく、遠吠えのように叫んで煙りを吹き飛ばそうとするフェンリル

しかし、煙幕はフェンリルに纏わり付くように離れない


「今だ! ジロウ殿!」

カオスとジロウはフェンリルの動きが止まった瞬間、文珠を何個も投げていく

【縛】の文字の文珠を大量に使い、足止めをするようだ



その頃遠くから観察していた西条達には、煙幕の中で叫ぶフェンリルの声しか聞こえて無かった


「煙幕? あんなもの効果があるのか?」

見た目はただの煙幕にしか見えない煙りに、西条はその効果を疑問視する


「時間稼ぎでしょうね… 魔鈴と横島君の魔法陣からかなり高い霊力を感じるわ。 何を呼び出すのかしら?」

魔法陣の細かい文字は見えない令子だが、魔法陣の大きさからして何かを呼び出すのだと考えていた


「ちょっと令子! 魔鈴と横島って、なんであんなに霊力高いの? どうみても下級神魔クラスはあるわよ!?」

一方横島と魔鈴が本格的に戦う姿を初めて見たエミは、その霊力の高さに驚きを隠せない

人間が使う霊力に変わりは無いのだが、その霊力の高さは普通ではありえないのだ

普段は霊力の強さを抑えてごまかしている二人だが、さすがに今は隠せない

もちろん全力では無いのだが、それでもエミには驚きであった


「私に聞かないでよ! 魔鈴の事知らないんだから…」

令子は少しムッとしてエミを睨み、魔鈴を一番知る西条に視線を向けた


「いや、僕も知らないよ。 元々、魔鈴君が戦闘をすること自体イギリス時代は無かった。 イギリスで魔鈴君が研究していたのは主に白魔法のはずだしね」

令子やエミや唐巣の視線に西条は、困ったように昔の話を語っていく

「日本でGメンに助っ人して貰った時に何度か魔鈴君の除霊を見てるが、基本的には前に出ない。 しかし動きから察すると、接近戦も戦えるとは予想していたが…」

実は西条は前から魔鈴の変化を疑問に感じていた

魔鈴の除霊スタイルが、イギリス時代と全くと言っていいほど違うのだ

イギリス時代は、除霊はあくまでも魔法研究の延長であり、除霊を目的とした動きや魔法は使って無かった

しかし、現在の魔鈴は除霊や魔族と戦う事を主体とした魔法を主に使用している

その技術的変化も驚きだが、魔鈴の考え方や性格まで微妙に変わっているも西条は不思議であった


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