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二年目の春・4

「待ちきれないみたいやから、最初は茶々丸さんにしよか。」

「これが松茸の香り……。」

さて横島の女性関係で賑やかな少女だが、一人我が道をゆくのは茶々丸であり彼女は木乃香が松茸を焼くのをじっと見ていた。

赤々と熱した炭火で二つに裂いた松茸を焼くだけであるが、下処理や注意点など難し過ぎる訳ではないが外せないポイントが幾つかある。

実は横島は松茸の調理法などは詳しく教えてないが木乃香は京都の実家の専属料理人に教わったことがあった。

木乃香自身も立場上贈り物などが届くことも多くかなり食べなれてるらしい。


「松茸ってこんなに匂いがするものなのね。 私が前に食べたのと随分違うわ。」

「松茸はデリケートっすからね。 普通に売ってるのはピンからキリまでありますけど輸送とか時間かけるとダメなんっすよ。 ここのはハニワ兵達が収穫した物をすぐに時間凍結した倉庫に保存してますから違いますけど。」

ちなみに同じ京都出身でも刀子は松茸にはあまり縁がないらしく実家に居た頃に食べたらしいが、正直あまり美味しいとも思えず家族共々こんなもんかと感じて以来食べてないとのこと。

実際日本で流通している松茸の九十五%ほどは輸入物だと言われているので、輸送に時間がかかる上に防疫の面から洗浄したりすると当然香りは落ちてしまう。

木乃香のように明らかに国産の最高級品を食べてる人間とその他では当然食べてる物が違い、下手すると人工的に松茸の香料で匂いをつけてる物もあるくらいなのだ。

現代日本ではマスコミなどが少し過剰に騒ぐので人気は未だに衰えないが、本当にその値段の価値があるかは人それぞれ判断が分かれるだろう。


「あの値段じゃあ、正直そのお金で他の秋の味覚を食べた方が私は好きなのよね。」

刀子なんかは下手に松茸を食べるよりは他の秋の味覚を食べた方がよほどいいと考えてるらしく、松茸に瞳を輝かせている茶々丸や少女達を少し複雑そうに眺めていた。


「値段を見れば自分の金で食うもんじゃないっすよね。 その金で牛丼何杯くえるやら。」

なお横島自身は松茸は好きだが、根本的な問題として自分の働いたお金で自分の為に買うかと言われると買わないと断言出来る。

異空間アジト産は凝り性なハニワ兵達の努力により美味しい松茸が大量にあるので食べるが、数千円から万単位のお金を一食に賭けるなどかつてのバイト時代を考えれば有り得なかった。

もちろんタマモやさよが食べたいと言うなら惜しまないが横島自身はどちらかと言えば牛丼でいいやと考えるのは今も変わらない。

まあお金に困らない今はそんなこと考える必要は厳密にはないのだが。


「美味しいんですけど、バイト代と計算すると確かに……。」

そのまま刀子と横島に加えて明日菜まで加わり松茸一本の価値を考えるとどうなんだと少し貧乏くさい話をしていくが、茶々丸が生まれて初めての松茸の香りと食感と味に感動する姿を見るとこれはこれでいいもんだと自分達も味わうことになる。

特に刀子なんかはかつて食べた松茸と違う香りと味に驚き松茸が好きになるも、それでも自分で国産の最高級品を買いたいとは思えなかったが。

正直雪広姉妹や千鶴と他の一般家庭のメンバーでは反応が違い、一般家庭の少女達はこんなに美味しいんだと驚いたというのが実情だった。


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