このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

二年目の春・4

「まあ、マスターだしいつものことよね。」

「うんうん。」

それはいいとも悪いとも言えない微妙な空気だったが、そんな中で美砂は場の空気を変えるように笑いながらいつものこだと口にすると桜子がそうだと言わんばかりに頷く。

なんとなく居心地の悪い視線と空気に困った表情の横島はオロオロするも、実は横島が気に入った客にサービスしたりするのは今更である。

日頃滅多に困ったりしない横島がオロオロするのは、ほぼ女絡みと決まっていて見ていて面白いのは確かだがやり過ぎてはいけないと美砂は思う。

自分達の存在をアピールするのはもちろん必要だが、同時にあまり嫉妬深く束縛しても横島は捕まえて置けないだろうことは理解していた。


「それはそれとして何故横島さんとエヴァンジェリンさんは親しくなれたんです?」

「あー、それ私も知りたい。」

横島が困る姿が見たかったエヴァのちょっとした爆弾は少女達と刀子からの微妙な視線へと繋がったが、それを美砂が止めると今度は夕映が今まで疑問だった一つである横島とエヴァの関係について尋ねてしまい逆にエヴァを巻き込む結果となってしまう。

正直夕映なんからエヴァの正体を知れば知るほど自分達が関わる前のエヴァと横島の関係が気になるらしい。


「何故って、特に理由はないが?」

「理由がないのが理由なのだ。 普通は私を見ると理由をつけて避けるからな。」

だが横島は親しくなった理由と聞かれてもすぐには思い浮かばぬようで首を傾げ理由がないと言い切るも、エヴァはそれが親しくなった理由だと告げる。

高畑や近右衛門など少ないが親交があった人は居たが、ある意味横島ほど何も考えてなかった男は過去を思い出してもそうはいない。

まあ実際は横島にとっては魔王なんて存在が特に珍しくなかったこともあるし、基本的に美女や美少女に甘い故に呪いに苦しむエヴァには少なからず同情的でもあったのだが。


「エヴァンジェリンさんは私が見えない頃に友達になってくれたんです。」

「いっしょにあそんだんだよ!」

なんというか横島の天然ジゴロぶりが明らかになったが、話がエヴァとの昔話になったのでさよとタマモは嬉しそうに今まで話す機会がなかったエヴァと仲良くなった時の話を始める。

明らかに横島の影響を受けた二人はエヴァに悪い印象が最初から全くなく、特にタマモは現状のエヴァと少女達を繋いだ張本人であるためみんなが仲良くなったことが本当に嬉しいらしい。


結局そのまま一同はいろいろな話にシフトしていくが、高畑はそんな話を聞きながら横島の可能性の片鱗が見えた気がしていた。

先日の超鈴音も一番恐れていたのは他でもないエヴァであり、超が明日菜や木乃香達に中途半端なちょっかいを出せなかった抑止力になっている。

だが横島は別にエヴァを抑止力にしようなどとは思ってなく偶然というか成り行きに近い。

そしてそんな偶然や成り行きを自らの力に出来ることこそ、かつてナギが世界を救えた一因でもあるのだ。

今更かもしれないが横島が知らず知らずに与えた影響で自分達は守られているのかもしれないと、高畑はそんなことを考えながら賑やかな少女達を眺めていた。



64/100ページ
スキ