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二年目の春・4

「またか。 あの連中も懲りんな。」

同じ頃魔法世界の辺境に住むネギの祖父の元にクルト・ゲーデルから何度目かも分からぬ手紙が届いていた。

メガロメセンブリアを中心にした魔法世界と彼らが旧世界と呼ぶ地球の情勢など辺境ではなかなか手に入らぬ情報を教えてくれていて、祖父としては情報入手のあては他にもあるがクルトからの情報はかなり役立っていることに間違いない。

ただし注意しなくてはならないのはクルトの目的は祖父とネギの協力であり嘘をつくとまでは言わないが、意図的に一部の情報を伝えて来なかったりと小細工をするところか。

正直クルト一派の現状が良くないのは別の友人からの便りで知っていて、メガロメセンブリアの政争に巻き込まれぬようにと心配してくれてる友人もいる。


「気持ちは理解するのじゃが……。」

長いことメルディアナの魔法協会を支えて魔法世界と地球の架け橋となるべく努力して来た祖父だけに心情としてはクルト一派のことを理解するし、真実を知る者の中で自分達で解決または人々を救おうとする者がまだメガロメセンブリアにも居ることはホッとする気持ちもあった。

それにメガロメセンブリアの人々とて愚かではないので変革を求めるクルトには一定の期待があることは確かだが、長い歴史のあるメガロメセンブリアではクルトは極端な言い方をすれば異端なよそ者でしかない。

祖父は仮に自分やネギが協力して何が出来るのかと何度か考えたこともあるが、下手をすれば内乱罪などでテロリスト扱いされかねないのが現実である。

メガロメセンブリアの社会と権力構造はそう柔ではないのだ。


「高畑君にも見放された連中は過激になる一方じゃしな。」

クルトに長い歴史において誰も成し得なかったことが出来るのかと考えていく祖父だが、ネギを利用して高畑が距離を置いて以降は穏健な考えの者などが潮が引くように避けていて現状のクルトと一派には過激な者しかほとんど残ってない。

皮肉なことにクルト個人への期待は疑念と表裏一体であり、現状のクルトに期待する人間は正攻法ではメガロメセンブリアは救われないと考える者がほとんどを占めている。

そしてそんな過激な思考の持ち主達が集まれば多少でも客観的な思考の持ち主は避けてしまうのだ。

こればっかりは仕方ないことだが元々クルトと高畑は水と油のように互いの価値観や生き方がまるで違い、高畑がかつてのナギのように堂々と今出来ることをしようとするのに対してクルトは高畑の一歩も二歩も先を読み裏で工作する。

そんな微妙なバランスが幅広い支持と期待を集めていただけに高畑がクルトから距離を置くと最早バランスも何もあったもんじゃなかった。


「高畑君に関しては個人的にはホッとしたがのう。」

ちなみに高畑に関しても定期的に祖父に手紙を書いているので現在の高畑の状況や心情をある程度は理解している。

流石に横島や明日菜に超鈴音のことは一切書いてないが詠春とゆっくり話す機会があったことや、自分の経験や見聞きした真実をこれからは必要とする人々に伝えていきたいとは書かれていて、高畑が少なくともネギの去就の際に動いたことで居場所を無くしたりしてないことに安堵していた。

欲を言えば高畑のような男こそ魔法世界の為に生きて欲しいとも思わなくもないが、それでも高畑自身の人生を犠牲にしてまでとは思わない。

しばらく会ってないが以前と違い過去に捕らわれなくなった高畑を想い、それはそれで嬉しく感じていた。


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