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二年目の春・4

さてこの日の夕食を終えた横島達は明日のお花見の為に異空間アジトに来ていた。

最早常連となりつつあるハワイ諸島にあるホテルに泊まるだけの予定が、高畑の希望により少し修行の相手をすることになってしまう。


「そんな感じっすよ。」

と言っても横島としては手合わせはしんどいので、以前も少し行った力の扱い方の基礎修行をホテルのパーティルームを借りて行っている。

それと高畑に便乗するように刀子と刹那もちゃっかり加わっていたがそれほど派手な修行ではないので地味な光景であり、この日は見学しているのは千鶴と夏美の二人だけだった。

他の少女達は修学旅行の影響か街に繰り出していて、安全な異界の街を満喫しているだろう。


「何事も地道な努力が必要なんですね。」

「うーん、実は努力しなくても出来る奴も世の中にはいるけどな。」

失礼ながら見た感じだけだといい加減で一言で言えば一番努力が必要そうな横島が、実は一番の実力者だという違和感に夏美は魔法ってよく分からないなと他人事のように思う。

一方の千鶴は努力の大切さを感じるらしく自分ももっと努力が必要かしらと口にするも、横島はそこで努力しなくても出来る奴は出来ると元も子もないことを口にして千鶴と夏美を驚かせる。


「ぶっちゃけ俺もそんなに努力した訳じゃないし。 多分この中で一番努力してないの俺なんだよな。」

ある意味自己の体験故に言えることだが横島が本格的な修行をしたのはアシュタロス戦後にルシオラの魂の覚醒により妙神山に移住した後になるが、それも本格的な修行は精々数年しかしてなく後は小竜姫に付き合う形で時々修行したくらいしかない。

正直なところなんとなく出来てしまうので物覚えが早かったのだ。

まあ横島は横島で何も出来ない頃に除霊現場で生死の境を何度か経験したので、その経験があればこそという事情もあるのだろうが。


「やっぱり世の中って理不尽なんですね。」

流石にそんな過去の話はしないものの自身はあんまり努力してないと話してしまう横島に千鶴は素直に笑っているが、夏美は横にいる千鶴をチラ見して世の中の理不尽さをポツリと呟くように嘆く。

人間は平等じゃないなんて愚痴を言うつもりはないものの、基本的にコンプレックスが強い夏美は千鶴を見ていると羨ましいという気持ちがよくあった。

美人でスタイルもよく性格までいい上にお金持ちだという千鶴を見て不公平だなと感じるのも仕方ないことだろう。

夏美自身はそんな自分を変えたいと思い演劇部に入ったりして努力はしているが今のところあまり変化はない訳だし。


「理不尽か? 分かるぞ。 俺もよくそう思うしな。 イケメン見るたびに何度呪ってやろうと思ったか。 だけど下手に呪うと本当に呪いをかけちまうから呪うことも出来なくなったんだよなぁ。」

「私は呪うなんて、そんな……。 羨ましいとは思うけど。」

真面目に基礎修行をする三人を指導しながらも夏美のコンプレックスに反応したのか元々コンプレックスの塊のような横島は、夏美に対して分かるぞ分かるぞとまるで同志でも見つけたかの如く同意するが夏美は流石に呪いたいほどネガティブではないので顔をひきつらせて困っていた。


「ダメですよ。 夏美ちゃんは前向きないい子なんですから。」

「そうか~。 そうだよなぁ。 夏美ちゃんはまだ明るい未来があるんだもんなー。」

最近は割と会う機会が多い横島と夏美だが実は直接的な関わりがあまりなく、少し暴走気味にコンプレックスを語り出す横島にどうしていいか分からず結局千鶴が嗜めるように止めに入ることになる。

そうなると一人落ち込む横島を千鶴がそのまま優しく慰めていくが、端から見ると若干イチャついてるようにも見えなくもなく修行に集中出来ないと刀子から文句が出るまで横島は千鶴に慰められていた。


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