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二年目の春・4

「なあ、横島さん。 超さん達のこと放置して大丈夫なん?」

「珍しいな木乃香ちゃんがそういうの気にするの。」

「だって超さんの計画は……。」

一方横島の店では横島と木乃香が旬のイチゴを使ったチーズケーキを焼いていたが、やはり木乃香は昨日中途半端な説明で終わった超鈴音のことが気になるらしく横島に尋ねていた。

箱入り娘である木乃香は横島の心配なんかはしても友人である超達を疑うような発言をすることは珍しく横島も驚くが、やはり木乃香にとって超鈴音の計画は家族の問題に直結するので不安らしい。


「ここだけの話、超さんと葉加瀬さんには二十四時間監視を付けることになってるんだよ。 無期限でな。 流石に学園長先生もそこまであの二人を信じてないからな。 まあ具体的に監視するのは土偶羅に頼んだんだが。」

「そうなんや。 じゃあ、ハニワさん達が監視するん? 大変そうやわ。」

高畑は責任持って超達を監督すると言っていたので高畑を疑うようなことは高畑には聞きにくかったらしいが、超ならば何かとんでもないことを仕出かしそうだとは考えてしまうようである。

そんな木乃香に横島は一瞬悩んだ末に、昨日は少女達に言わなかった超鈴音の監視のことを伝えていた。

正直未成年を監視するということはあまり知られたくないので出来れば黙っていたかったのだが、木乃香が不安になってる以上はそこを隠すと本末転倒になる。


「いや監視は例の遺産の運用システムで監視するんだ。 みんな誤解してるみたいだけど実はあのハニワランドって遺産の置き場所ってか入れ物みたいなもんなんだよ。 その真価はハニワランドを造ったりする技術とか蓄積した膨大な知識とか管理してるシステムとかにあるんだわ。」

超を監視することになってると聞き少しホッとした様子の木乃香だが、何を勘違いしたのかハニワ兵がコッソリと後を尾行したりして監視する光景を想像してしまい横島を笑わせていた。

そういえばきちんと説明してなかったなと思いつつそのまま監視方法としてアシュタロスの遺産の真相を語ると、木乃香はアシュタロスの遺産の真の価値に信じられないと言わんばかりの表情を見せる。


「もしかして、超さんのこと……。」

「あんだけ新技術やら理論をポンポンと出してれば誰だって調べてるって。 まあ真相を辿り着いたのは他には居なかったみたいだけどな。」

そのあまりの衝撃に驚きを隠せないが、同時に木乃香は今回の超鈴音の計画阻止に関して横島が以前から調べていたのではと気付く。

昨日の話では横島が具体的にどんな協力をしたのかはっきりしなかったが、よくよく考えてみると超鈴音が未来から来たなんて証明出来るのは横島以外は不可能であり今回百年も未来の超鈴音を出し抜けた理由がよく分かった気がした。


「おかしいと思ったんよ。 超さんが未来から来たなんて横島さんのこと知らへんと信じられへんもん。」

「超さんのことは学園長先生達と何度も話し合ったからな。 結局は高畑先生に美味しいとこ持っていかれたけど。」

「横島さんはこれ以上目立ったらアカンと思うわ。」

「それ学園長先生達にもよく言われてるよ。」

結果として横島から聞いた超鈴音の一件の裏側で木乃香はやっと心の中の不安が解消された気がする。

勝てるはずがないのだ。

魔王と呼ばれるエヴァと同等かそれ以上の力を持ち天地創造する魔王の後継者のようなものである横島を敵に回して、少なくとも超鈴音では勝てるはずがないのは木乃香にも十分理解できる。

そして今回何故全てを魔法協会にも極秘のうちに収めたのかも理解していた。

未来知識もそうだが祖父である近右衛門達が何よりも横島の存在を隠したいのだと理解できぬほど愚かではない。


「横島さんありがとう。 ウチらがちゃんと見てるえ。」

そのまま話が一段落する頃になるとちょうどチーズケーキが焼き上がり、それを嗅ぎ付けたタマモが味見をしに厨房に入ってくると木乃香は最後に一言だけ付け加えて超鈴音の話を終えている。

実際横島が何処まで何をしたのかまでは分からないが自分達を守ってくれたのだということは確かだろうと思う。

ただ横島の活躍は高畑と違い誰にも知られずに終わるのかもしれないが、それを自分達はきちんと理解してあげたいと思ったようだった。

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