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白き狼と白き狐と横島

「西条先輩、お金の問題じゃありません。 二人はまだ子供なんです。 オカルトや殺人事件の捜査などさせる訳にいきません」

驚き声を荒げる西条とは対照的に、魔鈴は冷たいと見えるほど冷静である


一方、店の奥ではタマモとシロに加え雪之丞とタイガーとピートと愛子の面々が、騒ぎを聞き付け西条と魔鈴の会話を聞いていた

ちょうどこの日はみんなで集まって勉強会を開いていたのだ


「どういうことでござるか?」

「私も知らないわ。 でも……多分横島と魔鈴さんは、私達をオカルトから離そうとしてるのよ」

元々西条に協力するつもりのない二人だが、自分達の知らないところで横島と魔鈴が何かを決めていた事には驚いている


(薄々そんな気はしたのよね……)

タマモはふと魔鈴の家に来てからを思い出してゆく

三月と四月の頃は、結構除霊の依頼が忙しい日が続いていたのだが

そんな時にシロは当然のように自分も手伝うつもりでいたが、横島と魔鈴によりやんわりと断られている

それからずっとあってないような理由を付けては、シロとタマモの除霊への参加を認めなかった経緯があったのだ



その始まりは横島が令子と決別したその日の夜の事

横島達に加え雪之丞と両親も交えて夕食を食べた後、寝室に入って魔鈴とふたりっきりになった横島はふと真剣な表情で魔鈴を見つめていた


「魔鈴さん、相談があるんすけど……」

「なんですか?」

突然相談があると話し出す横島に、魔鈴は少し驚きを感じる

細かい事で相談する事はあるが、横島の表情がいつになく真剣なのだ


「シロとタマモの事です。 二人に除霊の仕事をさせないようにしたいと考えてます」

「私は構いませんよ。 元々一人でやってましたし、横島さんと雪之丞さんだけ十分ですから。 しかし、何故今そんなことを?」

真剣な表情の割には、話の内容はたいしたことはない

魔鈴は横島がそれほど悩む内容なのかと不思議に感じる


「ずっと考えてました。 いや、今も考えてます。 二人のこれからを、そして将来を……」

横島が語り始めた事はタマモとシロのこれからの事だった


「どうすれば、あいつらが幸せになれるか。 ずっと考えてるんすけど、俺にはわからないんすよ。 ただ、あいつらが妖怪だって事は忘れちゃダメな気がします」

それから横島は自分の中で考えていた事を魔鈴に少しずつ打ち明けていく


横島が種族や寿命の違いを考えるきっかけなったのは、やはりルシオラの存在が始まりである

人と魔族の違いや短い寿命の問題など、横島とルシオラには越えるべき壁が多かった

ルシオラと一緒に居た当時は何も考えてなかった横島だが、失ってから全てに気付き考えに考え抜いている

そんなルシオラとの事に苦悩する横島が妖怪であるタマモとシロの事について考え始めるのは、ある意味必然だったのだろう


「俺は種族の違いがこんなに大きいなんて思わなかったんですよ。 ルシオラの件で痛いほど実感しました。 俺を信じて付いて来てくれたシロとタマモのこれからをどうすればいいのか、ずっと考えてるんです」

「横島さん……」

それは横島だから考えた事かもしれない

人と人外の違いなど気にもしない横島は、何故他の人間があれほど気にするのか理解出来ないのだ

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