このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

二年目の春・4

「辛い思いをさせて悪かったネ。 五月。」

同じ頃女子寮の超と葉加瀬の部屋では超と葉加瀬が五月と話を始めていた。

修学旅行で決別して以来ろくに口を聞くこともなかったが、暫定とはいえ処遇も決まり少し落ち着いた両者は話をすることにしていたのだ。


「……超さん。」

「超包子は今後しばらく五月に任せたいネ。 私は処分に問わず当分謹慎することにするヨ。」

超と葉加瀬からすると自分は裏切ったとも言える立場だと自覚している五月はこれからどう付き合って行くべきか随分悩んでいたが、超は超包子の運営を五月にしばらく任せたいと告げる。

明日の午後には表の学園と生徒会から事情聴取があり処分の決定はGW明けになるだろうが、処分の内容に問わず超は当分謹慎するつもりだとこの時始めて葉加瀬と五月に明かす。


「これからどうするんですか?」

「……分からないネ。 未来に帰るには今年の麻帆良祭か二十二年後。 帰ることを許されるかも分からなければ帰るべきかも分からないネ。」

そんな超の謹慎という言葉に葉加瀬はこれからのことを口にするも、超はなんと分からないと告げてしまい葉加瀬と五月を驚かせる。

常に自信満々で答えに窮したことすらない超が自信も考えもなく分からないと口にしたのは初めてかもしれない。

すでに渡航機カシオペアは全部近右衛門の手に渡してしまったので勝手に帰ることも出来ない。

新たに造ることはその気になれば不可能ではないが、超は帰りたいという気持ちと同時にこの世界を僅かだが変えてしまった責任を取りたいとも考えている。


「魔法世界はどうなるんでしょう? 超さんの歴史と同じくサウザンドマスターの息子が立ち上がるのでしょうか?」

「それも分からないネ。 彼が祖父と共に魔法世界に移り住むこと自体が私の歴史にはないことヨ。 祖父は聡明な魔法使いだという話だが、だからこそ幼い孫を世界の闇に近付けるとも思えないネ。 まあその辺りは高畑先生と少し話をしてみれば分かるかもしれないが。」

正直魔法世界を託す人が居れば未来に帰り自身の行動の結果や未来の仲間達がどうなったか見届けたかったのだが、託したかったネギは麻帆良に来なく代わりにと期待した茶々丸も自身の故郷である麻帆良とこの世界を守ることを決断してしまった。

それにずっと警戒しつつも、いつかは動くかもしれないと期待もしていた横島はとうとう動かぬまま終わってしまったのだ。

結局超には横島という存在は何なのかという謎が残ったが、今回のことで横島が関わった確証がない以上自身が意識しすぎただけかもしれないと思い始めている。

仮に何かしらの協力をしていたとしても横島には魔法世界を救う意志も力もないだろうと考えた方が自然だった。

現状でも葉加瀬は魔法世界を気にしているがすでに歴史は超の世界と解離し過ぎて超にもこの先は分からない。


「葉加瀬、魔法世界のことは一旦白紙に戻すことにするネ。 高畑先生が予想以上に頼りになることが分かったのは現状では好材料ヨ。 ひとまず高畑先生とよく話をするべきネ。」

全てを失いすでに夢破れた超が未来に帰ることを悩む最大の理由は葉加瀬にある。

葉加瀬は葉加瀬なりに世界と未来を想い協力してくれたが、知りすぎた弊害かこのまま放置すれば世界の闇に飲まれる危険があった。

純粋に自分を最後まで信じてくれた葉加瀬を置いて未来に帰ることは超には出来ないし、自身が葉加瀬を変えてしまったように自身の影響で変わったこの世界の責任は取らねばならないと最早帰れぬかもしれない未来に想いを馳せていた。

46/100ページ
スキ