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二年目の春・4

「未来ね。 横島さんも時間移動出来るみたいだし、案外未来だと普通に時間移動とかしてたりして。」

さて女子寮に戻った少女達だが明日菜と木乃香は帰宅後お風呂に入り、明日菜は勉強をしつつ木乃香は日課となったレシピノートに今日教わったことなんかを書いていた。

それはいつもと同じ日課であるものの会話の話題はやはり超鈴音のことであり、未来という名の異世界から来たということについて話している。

ただ時間移動自体は横島が以前出来ると公言しているし異空間アジトに遊びにいく時は時間を遡って帰っているので、あまり実感はないが自分達も時間移動は経験してるんだという認識が少なからずあるせいかやはり驚きはあまりない。


「でも過去を変えようとするなんてリアルやとやったらあかんことやと思うわ。」

「うーん、難しくてよく分かんないけどあんまりいいことじゃないんでしょうね。」

危機感に関してもすでに高畑や横島達が対処済みであるということなので焦りや危機感は大きいとは言えないものの、木乃香は過去を変えようとした超鈴音に対してやってはいけないことをやろうとしたと言い切る程度には事態を理解してもいた。


「ウチはお爺ちゃんもお父様も魔法協会のトップやから他人事やないわ。」

「魔法を公開して何しようとしてたのかしらね。」

「何が目的でもウチには超りんのやり方じゃ上手くいくとは思えへん。 お爺ちゃんもお父様もみんなもずっと頑張って来たんよ。 それを無理矢理変えようとするなんて。」

明日菜に関してはやっぱり悪いことなんだろうなとしか感じてないが木乃香は本来の歴史と違い、夕映やのどかほどではないが社会経験もあれば魔法協会の苦労も知っている。

関東魔法協会の新年会や東西の魔法協会の話し合いでは料理を提供したし、周囲から魔法協会の苦労が漏れ伝わっていていろいろ聞いていたりもするのだ。

それに幼い頃から見てきた祖父や両親は決して無能でもなければ権力を自由にしてる訳でもない。


「ドラ〇もんって確か歴史を勝手に変えちゃうのよね。 あれも実際自分がされたら許せないんでしょうね。」

一方の明日菜は相変わらず猫型ロボットのアニメに置き換えて理解しようとしていたが、いつだったか見たの〇たの結婚相手を変えちゃう話を思い出していた。

アニメではさらっと変えてハッピーエンドのようにしていたがリアルで自分の未来を勝手に変えられたらと思うと許せないとは思うらしい。


「人って怖いんやね。」

そして今までクラスの友人として普通に接していた超鈴音が自分達を騙してまで過去を変えようとしたことで木乃香は生まれて初めて本当の人の怖さを実感することになった。

自分の両親や祖父達の苦労も何も考えず自らの目的のみで過去を変えようとしたのだ。

もし超鈴音の計画で魔法が突然公開されたらただでさえ難しい立場である自分の家族はどうなるのだろうと考えると、それは木乃香にとって裏切られたとしか思えない結果である。


「大丈夫よ。 学園長先生だっているし高畑先生とか横島さんもいるもの。 超さんが何を企んでも無駄よ。 絶対に。」

かつて木乃香は刹那に避けられて悲しい想いをしたが、それでも刹那は裏切った訳ではない。

やり場のない悲しさや怖さに流石の木乃香も表情が曇るも、明日菜はそんな木乃香に超鈴音が何を企んでも無駄だと笑って言い切り励ましていく。

木乃香もそんな明日菜の屈託のない笑顔に気持ちを持ち直すが今回の件で人の負の面を実感したことで、優しい人々に囲まれている木乃香にとってはなかなか得られない貴重な経験となるのは歴史の皮肉なのかもしれない。
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