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二年目の春・4

「タマモ君のおかげで助かったな。」

その後珍しく怒りの表情を見せたタマモに流されるように話は終わり、結局伝えた情報は最低限で済んでいた。

少女達は夕食の後片付けなどを手伝いみんな一緒に女子寮へと帰りさよとタマモは二階に上がりお風呂に入っているが、店には高畑と刀子にエヴァ一家がまだ残っている。

そんな店内ではつい今しがた横島に勧められるままにお酒を少し飲みはじめていた高畑だが、先ほどの会話をタマモに止めたことで無難に済ませるけとが出来たことに何処かホッとした様子であった。


「でもあの子達が真相に辿り着くのは時間の問題でしょうね。」

「僕はそれでも構わないと思う。 ただその過程は気を付けてやらなきゃダメだとは思うけどね。」

しかし少女達がまた一歩、世界の秘密に近付いたことは確かで刀子は今回は避けられたが少女達が魔法世界の秘密を知る日は遠くはないと確信する。

だが高畑はそれでも構わないと少女達が知ること自体を妨げるつもりはないと口にした。


「前に穂乃香さんにも言われたことだけど、僕は生き残った者の定めとして二十年前のことやその後のことを彼女達や超君達にこれからゆっくりと伝えようと思ってるんだ。」

そして高畑は超達のみならず横島に近い少女達にも、頃合いを見計らって魔法世界の秘密などの過去を語り聞かせるつもりだと告白する。

実は近右衛門にはすでにそのことを相談していて明日菜の過去を絶対に悟らせないとの条件付きで許可も得ていた。


「知らん方がいいのか、知った方がいいのか。 難しいとこだよなぁ。」

「貴様は甘やかしすぎた。 それを決めるのは貴様ではない。 奴ら自身で決めることだ。」

そんな高畑の言葉に刀子とエヴァは高畑も変わったなと改めて感じるが、一方で横島は未だに少女達に教えるべきかどうか迷い決断出来ずにいる。

元々覚悟や信念があって生きるタイプではない小市民な横島とすれば知らなくてもいいのではと未だに思うが、そんな横島をたしなめたのはエヴァだった。

基本的に少女達に甘く過保護気味な横島と違いエヴァは少女達を一個人として扱っている。

どのみちを選ぶのも少女達自身であり、それを受け止めてやるべきだと至極真っ当なことを告げた。


「そうね、あの子達自身で選ぶと思うわ。 私達はそれを見守り大きな過ちを犯さないか気を付けるくらいかしらね。」

この時刀子はエヴァの意見に賛成しつつも横島とエヴァの決定的な認識の違いに気付いている。

横島は未だに少女達を普通の生活にいつでも戻れるようにとその可能性を残しているが、エヴァはすでに一歩踏み出した少女達が普通の生活に戻ることはないだろうと結論を出しているのだ。

それは横島が誰よりも普通の生活に憧れているからこそ可能性を残してやりたいのだろうと思うし、刀子自身も普通の生活に憧れのようなものがあるから気付けたのだろうと思う。

だがそれでも刀子は少女達が完全に普通の生活に戻ることはないだろうとも思う。

それぞれ価値観や横島との関係は微妙に違うが横島と一緒に居る楽しさを知ってしまった以上、普通の生活に戻れないのは刀子自身が身を持って理解している。

それと誰も悪用しないので目立ってないが横島の力や技術は超鈴音の比ではなく、近くに居るだけで老いや病の苦しみすら解放されるのに戻れるはずがない。

まあそれでも仮に横島が女性を物やアクセサリーのように扱う外道なら違うのだろうが、女性に対して甘く優しいだけに逆に始末に負えなかった。



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