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二年目の春・4

「俺もほとんど見てないぞ。 知らん方がいいのは一緒だからな。 それに日々変わりゆく世界ですでに別物となった平行世界の歴史なんぞ見ても意味ないし。」

「いえ、そのことではなくて横島さんが居ないというのは?」

「ああ、そっちか。 俺は元々この世界の人間じゃないしな。 来なかった歴史だって当然あるし、厳密に言えばこの世界は超さんが来た時点で彼女の歴史からも解離してるからな。 超さんの歴史とこの世界は現時点でもいろいろ違いはある。」

超鈴音の歴史には未来から来た超鈴音という存在がないという意味を知性派の少女達は考え始めるも、実のところそれ以上に興味があったというか衝撃なのは横島の居ない世界があるということだろう。

それぞれに思うことはあるし超鈴音のことも当然気になるが、極論を言えば超鈴音の件は他人事であるが横島が居ない歴史というのはまんざら他人事ではない。


「あんまりいい想像出来ないわね。」

この一年で横島の存在は麻帆良に確実に定着しているし、積み重ねた想い出だってたくさんある。

一番関係が縁遠い刹那ですらこの世界では横島やタマモの影響で木乃香と和解して、最近は本来の歴史と変わらぬほどに自然な関係になりつつあるのだ。

自分達に有り得たかもしれないもう一つの歴史を知りたいという欲求が膨らむ少女も居たが、そんな空気を一蹴するかのように口を開いたのは意外にも千鶴だった。

横島の影響で変わりゆく木乃香達と違い千鶴は表面的には横島と出会う前からあまり変化ないが、千鶴を取り巻く環境は激変したと言っても過言ではない。

自らが変わるのは努力次第では可能だと考える千鶴であるが人を変えるのは簡単ではないと思うようである。


「私も考えただけで怖いです。」

そしてそんな千鶴に真っ先に同意したのはある意味横島の影響を一番受けたさよだった。

さよの場合はもし横島に出会わなければというのを何度も考えたのは間違いなく彼女であり、一人だけの孤独な記憶が次々と甦ってしまうらしい。


「さよちゃんどうしたの?」

結果として場の空気が沈みがちになるも、一人だけ話に全く着いていけてないタマモは元気がなくなったさよを心配して駆け寄り抱きつく。


「こわいおはなしはわたしもいや。 たのしいおはなしがいい。」

「タマちゃん、ありがとうね。」

正直何が何だか理解出来てないタマモだがさよが怖がる話をするのは嫌らしく、さよに抱きついたまま横島や少女達にプンプンとちょっと怒るように楽しい話をするように訴えると流石に誰も超鈴音の歴史の自分達のことを聞くことが出来なかった。


「超鈴音は自らの歴史に固執して失敗したのだ。 そんなもの聞いてもブタの餌にもならん。」

「そうだね。 だから僕達は超君の歴史情報や未来知識は可能な限り回収し、特に歴史知識に関しては横島君に頼んで封印することにしたんだよ。」

そしてそれでもなお興味を捨てきれない一部の少女にトドメのように釘を刺したのは、超鈴音の話に全く興味を示さなかったエヴァである。

エヴァが話を超鈴音の話題に戻し失敗の原因が歴史にあると言い切ると高畑が超鈴音の歴史や未来知識の扱いを説明し、少女達にも暗に明かせないことだと告げていた。


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