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二年目の春・4

さてこの日は店の地下室で美砂達とタマモが麻帆良祭に向けて楽器の練習に励んでいた。

まだまだ形にはなってないが横島が時折教えてることもあり上達スピードは素人の自己流なんかよりは断然早いものの、音楽教室なんかに習いに行くのと比べると流石に早いとはいえず特別なことをしてる訳ではない。


「タマちゃんも上達してきたわね。」

しかし幼いタマモを含めて多少なりとも成長が実感出来る為か四人は楽しんで練習している。


「よこしまとれんしゅうしたんだよ!」

正直本当に麻帆良祭のイベントに参加出来るレベルになるかはまだ分からないが、ダメなら来年でもいいやと気軽な気持ちで頑張っていた。

美砂達の場合は木乃香達やあやかほど忙しくないので練習時間は放課後を中心に十分あり、練習場所にも困らないのでなんとかなるのではと考えているが。


「中学最後の麻帆良祭だもんね。」

春祭りも終わり麻帆良の街は少しずつ麻帆良祭へ向けた空気になりつつある。

今のクラスのみんなで麻帆良祭に参加するのは当然今年で最後であり高等部に進学するとみんなバラバラになるだろう。

何か思い出に残る麻帆良祭にしたいとの思いが美砂達にはあった。


「去年が去年だからね。 並大抵のことじゃつまんないのよね。」

麻帆良祭に向けて人一倍楽しみにしているタマモを尻目に今年はどうなるんだろうと考える三人だが、去年があまりに濃い思い出なだけに今年は悩むのが実情である。

ただまあ横島が絡めばまた面白くなりそうだなと勝手に期待もしていたが。



「また来たわね。」

同じ頃刀子は自宅の掃除をしていたがついさっき来た高校時代の友人の結婚式の招待状に軽くため息をつく。

二十代も半ばを過ぎると続々と昔の友人の結婚の知らせが届くようになっている。

刀子自身も学生結婚したので人のことは言えないが正直羨ましいという気持ちがない訳ではない。


「仕方ないとはいえ……。」

現状では刀子には再婚の予定は全くなく、家庭を持ち落ち着く友人を見ているとこのままでいいのだろうかという焦りは未だにある。

十代も半ばに差し掛かる頃の少女達と同じ立場で恋愛を楽しむには少しばかり年を重ねすぎたと思わなくもないのだ。

その点で言えば想い人である横島は少女達以下の恋愛下手な為に少女達とは上手くやれてるが、刀子からすると焦れったい時が多々ある。

無論大きな不満がある訳ではなく横島と一緒に居たいという気持ちは変わらないものの、本音を言えば女として愛されたいという気持ちは日に日に大きくなりつつあった。

普通の家庭を持ち共に年を重ねたいとまでは言わないが、この先もずっと側に居るならば例え自分一人だけでなくとも愛されたいと願ってしまう。

現状の刀子は老化防止魔法薬のおかげで精神的には余裕があるが、恋愛をこれから始め楽しむ少女達と完全に歩調を合わせるのは少しばかりしんどいのが実情だった。


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