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卒業の意味

同じ頃、ピートは唐巣の教会で緊張気味に祈りを捧げていた


「何か忘れ物したような…」

落ち着かない様子で鞄の中を確認するその姿は、いつか見たような光景である


「ピート君、それ5回目だよ? 君の緊張する癖も治らないね」

少し困ったような笑みを浮かべた唐巣は、ピートをリラックスさせようと声をかけた


「すいません… いざ卒業式だと思うと緊張してしまって…」

「謝る必要は無いよ。 最後の日だから楽しんで来るといい」

苦笑いして謝るピートを唐巣は笑顔で送り出していた


(いろいろあったが、無事に卒業出来てよかった)

唐巣はふと学校に通う頃のピートを思い出す

慣れない異国の地で、バンパイアハーフの自分が上手くやって行けるか

ピートは最初、緊張と恐れのような感情を抱いたまま学校に通っていたのだ

それがどういう訳か、すんなり学校に馴染んでしまう


(少し無理を言って横島君のクラスに入れたのは間違いでは無かったな…)

学校に通ったことの無いピートを、横島のクラスに転入と言う形で通わせたのは唐巣である
 
無論、苦労もあった

学校関係にコネなど無い唐巣は六道家に頼んで借りまで作って、ピートを横島のクラスに通わせていた


理由は二つ、すでに妖怪の愛子がクラスに受け入れられている事

そしてピートを恐れない横島が居る事


いろいろ問題行動の目立つ横島だったが、当日からピートをバンパイアハーフとしてではなく一個人として見ており

見た目を嫉んだりモテるのを羨ましげに見つめたりはするが、バンパイアハーフとして避けることはしなかった

唐巣はその点を大きく評価していたのだ


(しかし横島君は…)

横島の事を考えると、申し訳なさそうな表情になり神に祈り始める

「神よ… 彼に祝福を与えたまえ…」


横島のGS免許返上と美神親子との決別の真相を、唐巣はわざわざ六道家に出向いて大筋で聞いている

それだけ突然横島がGSを辞めた事に、唐巣はショックを隠しきれなかった

唐巣自身、横島の将来には期待していた一人なのだから


無論唐巣が知るのは、真実の大まかな流れだけである

アシュタロス戦の美神親子の行動が原因で、横島が美神親子から決別したこと

横島の為に亡くなったルシオラを今も想い続けているらしいと言うこと

そしてあの戦いの後、横島を支えてる人が魔鈴だということくらいである


「こうなったのは私にも責任がある。 私は… いったいどうやって彼に償えばいいのか…」

この数日、唐巣は何度も同じ問い掛けを自問自答していた

少なくとも、自分には令子の行動で責任がある


横島に対して何も教えないことなど、何度も苦慮したが結果的に令子に話すことは無かった

令子に対しての遠慮や話しても聞かない性格などもあり、自分が口を挟むことはしなかったのだ


「私はGSとして失格だな…」

人間的に問題の多い令子に、GS免許を与えてしまった自分を責める唐巣

彼の祈りはしばらくの間続いていた


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