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番外編・ネギまIN横島~R~(仮)

《新たな時代の担い手》


桜の季節が待ち遠しい三月。

私は突然所属する部署の先輩に誘われ先輩の自宅に来ていた。


「総合研究所ですか?」

「ああ、表向きは経済やら次世代技術の研究だが本命は魔法技術の研究開発だ。」

雪広エレクトロニクスに勤める先輩は今年で四十五になるエンジニアの一人だが、先輩は魔法技術の研究者という裏の顔を持っている。

尤も魔法技術と言うのは仮に開発しても日本では公表出来ぬし噂に聞く魔法世界でならば評価されるかもしれないが、向こうは二大大国が冷戦状態な為にグローバル化されてなく片方の大国とは絶縁状態なので発表の場すらほとんどない。

本当に趣味の延長線上にある研究なのは大学時代に魔法協会の技術開発部に協力していた私がよく理解している。

雪広コンツェルン本社には極秘にて魔法技術の開発している部署があるが、そこも似たり寄ったりなのは友人がそこに所属しているからよく知っていた。


「魔法技術の研究を本社から切り離すんですか?」

「らしい。 那波重工も加わって魔法技術の研究を一本化することにより研究を加速させたいみたいでな。 あとこれはまだ本決まりじゃないが関西からも技術者が加わるらしい。」

ただ日本というかこの世界では秘匿されてる魔法技術だが研究する価値がないかと言われるとそうとは言い切れない。

技術というのは積み重ねの歴史であり魔法とてそれは同じだ。

個々の才能に左右される要素が強いが研究をしていけば魔法を使えぬ一般の人にだって恩恵を得られるようになる。

いつの日か魔法が日の目を見る時の為にと雪広家では戦前から極秘にて魔法技術の研究をさせていたらしい。


「魔法協会の技術開発部もあるでしょうに。」

「魔法技術の開発は一朝一夕では出来ん。 研究段階での多様性はまだまだ必要だ。 それにな、魔法の秘匿もいつまで続くか分からんと俺は見てる。 インターネットなんて物が出来て誰でも情報を発信して誰でも情報を得られる時代なんだ。 一部のマスコミが好き勝手に世論を作る時代は時期に終わる。 いつまでも魔法を隠して置けなくなるし魔法が世に出た時に焦っても遅いんだ。」

夕食をご馳走になりながら話を聞くが先輩は酒が入ってるからか少々熱くなり魔法技術に関する持論を語り出す。

いつの日か魔法が世に出たら自分達の研究は子供や孫の世代の財産になる。

代々の研究者達はそれを合言葉に頑張って来たらしい。


「それで先輩はその総研に行くんですか?」

「ああ、数年は出向扱いにしてくれるらしいしな。 お前も一緒に来ないか?」

てっきり先輩が総研に行くことを教えてくれる為に私は家に呼ばれたのかと思ったが、なんと先輩は私を総研に誘ってくる。

私は少々魔法の才能があったこととで学生時代には魔法協会の技術開発部に少々加わっていたが、卒業後は時々先輩に頼まれて先輩の研究を手伝っていただけの人間だ。

現在では電子工学の方が専門のエンジニアでありとても本格的な魔法技術の研究に役立てるとは思えなかった。

「私の魔法技術は少々かじっただけで本格的なものには役立てませんよ。」

「分かってる。 だがお前はまだ若い。 チャレンジしてみないか? 数年して合わないと思えば会社に戻れる。 立場も相応に考えてくれるそうだ。」

突然の先輩の誘いに私は困惑するが若い今だからこそチャレンジする価値があると熱心に誘ってくる。


「作りたくないか? 魔法で飛ぶ飛行機が!」

「理論的には不可能じゃないですけど……。」

先輩の研究は魔法技術による飛行機の開発だった。

魔法世界ではすでに実用化されているが地球では環境や物質の違いなどにより現段階でも実用化されてない。

アメリカなどで話題のUFOは実験中の魔法技術による飛行機ではないかというのは、魔法関係者ではよくされる冗談のような噂だが確かに理論的には不可能ではない。

それに百パーセント魔法動力のみの飛行機に拘らねば現段階でもかなり可能性は高まるはずだ。

ただ問題は魔法技術による飛行機の研究は資金的に個人で手を出せるレベルではないということ。

先輩は模型飛行機に浮遊魔法を使ってみることから地道に研究していたが、どう足掻いてもラジコンサイズの飛行機による研究すら資金が足らずに出来てない。


「那波重工は個人向けの小型ビジネスジェットの開発が完成間近だし那波重工の協力があれば研究は一気に進められる!!」

「先輩。 その総研では本当に魔法技術による飛行機の研究が許されるのですか? なんだか話が上手すぎる気がしますけど。」

「ああ! 本当に研究していいんだ! 会長にお会いして直々に許可はもらった!」

長年の夢が叶うと喜ぶ先輩に私は少し不安になり先輩が騙されてるとまでは言わないが体よく左遷されるだけなのではと心配になってしまう。

総研への誘いを少し待ってほしいと答えた私は、翌日には本社勤務で魔法技術の研究をしてる友人に連絡して事の真相と裏付けが取れないか頼んでみた。

雪広グループが騙すような形で左遷させるとは聞いたことはないが、本社ならばともかくグループ企業のしかも末端に近い先輩なだけに上司の誰かにでも睨まれた可能性はゼロではないだろう。


「先輩。 私も総研に連れてって下さい。」

私が先輩に返答したのは一週間ほどした頃だった。

友人からは先輩の話が本当であることや雪広グループ内でも有名な魔法飛行機バカだと噂される先輩に会長が注目して、引き抜いたのが真相だと分かったからだ。

その友人に私は自分も誘われてると告げると魔法もそうだが電子工学の技術者も欲しくて総研ではその筋からも先輩に注目していたことが分かり、私も電子工学の技術者の端くれとして魔法と電子工学の双方の視点から是非来てほしいと友人にも誘われた結果総研行きを決断する。

自分達の手で魔法飛行機が飛ばせるかもしれない。

そんな先輩の夢に賭けてみたくなった。

無論それは長く答えの見つからぬ研究の日々が始まることを意味していることは百も承知であるが。

それでも私は一歩を踏み出していた。



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