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二年目の春・4

さてハワイの修学旅行一行は最後の夜を迎えていた。

明日には帰国するということで生徒達は最後の夜を満喫すべく盛り上がるが、監督する教師陣は大変である。


「どうでした? 高畑先生。」

「ちょっと騒いでる子が居たので少し注意しておきました。」

「そうですか。 ご苦労様です。」

今回ハワイの修学旅行には女子中等部から五クラスほど来ていて教師陣のトップは女子中等部教頭であった。

海外ということで教師として経験豊富な教頭が来ていたが、日頃から温和な教頭で若い教師からは学年主任の新田より楽だという声が裏で囁かれている人物である。

ただ意味もなく甘いという訳ではなく教師に許されてる裁量の範囲で柔軟に対応してる人物で、今回の修学旅行でも消灯時間は決まっているが生徒が騒がない限りは多少の夜更かしも大目に見るなどしていた。


「高畑先生のA組はちょっと心配だったんですが、ふたを開けてみれば大人しいですね。」

「A組は相変わらず目立ってますが、以前と比べると社会と関わる生徒が増えたからか要領が良くなりましたからね。 意外にあんな子達は上手くやるものですよ。」

高畑が教頭の部屋に報告に行くと高畑よりも若い教師も一人報告に来ていて少し三人で話をするが、若い教師は何かとお騒がせなA組が修学旅行期間中になにかをしでかすかと心配していたようだが教頭は意外にもその手の心配はあまりしてないようである。


「要領ですか?」

「規則は守ることが基本ですし私達は守らせるのが仕事ですが、学生なんですから多少はハメを外したり夜更かししたりするもんなんですよ。 ですから後はいかに他人に迷惑をかけず上手く楽しむかなんです。」

流石に教頭ともなるとある程度各クラスのことを見ているらしく、3ーAが昨年から要領が格段によくなったと誉めていた。

実際3ーAの少女達は昨年の麻帆良祭以降史実より要領が良くなっていて、それは特に横島との距離が近ければ近いほど顕著になる。

若い教師はまだあまり理解できないようだったが麻帆良学園は日本の教育界の離れ小島と言われる学校なだけに、型にはめたような教育というよりは柔軟性や応用力を重視する教師が多い。

この教頭もそんな一人らしく規則と常識の範囲内で上手く楽しむものだと若い教師に語って聞かせる。


「それでいいんですか? 」

「新井先生は外部からの採用なのでまだ慣れないかもしれませんが時期に慣れますよ。 ガチガチに規則で固めた学校が良ければうちには来ませんから。 生徒が自ら考えることを可能な限り見守るのもうちの教師の仕事なんです。 高畑先生なんかはその辺りの加減が上手いので今度教わるといいですよ。」

どうも若い教師は麻帆良学園の卒業生ではなく外部からの採用らしくかなり優秀な人らしいが、少し生真面目なのか麻帆良学園の独特の世界に今一つ慣れてないらしい。

実のところ魔法世界で生まれ赤き翼と共に育った高畑は師匠であるガトウの勧めで一時期麻帆良学園に通った以外は学校らしい学校に通った経験がないので、麻帆良学園の独特の世界には慣れているという事情もある。

教師としての授業や勉強の教え方などはお世辞にも上手いとは言われない高畑だが人生経験は人一倍あるせいか、生徒との関係や関わり方などは意外に評価されてる部分であった。

まあ学年主任の新田教師のように立場上厳しくしている教師も中には居るが、基本的には過度に生徒の自主性を潰すような指導は麻帆良学園では行われてない。

ある意味それが麻帆良学園の特徴であるのだが、正直教師陣からすると一律に規則で管理した方が楽だし人としての経験や能力がないと特に担任など勤まらないので外部からの採用教師はその辺りを上手くやれずに辞めていく人も時々いる。

結局教師陣は最後の夜もそれなりの緊張感の中で過ごして行くことになる。

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