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二年目の春・4

「どうかしたのですか? のどか。」

「ううん。 別に。 ただ超さん達元気ないなって思って。」

一方のどかは人を寄せ付けぬ雰囲気で話し込む超と葉加瀬を遠くから眺めて少し寂しそうな表情を見せていた。

完璧超人と呼ばれテストは常に満点で料理も運動も得意な超はかつては眩しいくらい充実した人生を送る人に見えていて、自分なんかとは住む世界が違うとすら感じていたのだ。

それが違うと気付いたのはいつだったかなとのどかは考え始めるが、さほど昔ではなく割と最近と言えるだろう。

元々本が好きで本屋なんてアダ名で呼ばれつつもクラスでは会話は少ない方で、賑やかなクラスメートを眺めてるだけで楽しかった頃には気付かなかったことである。


「何を企んだのか知りませんが、横島さんがわざわざ関与して止めたと考えると尋常なことではないですからね。 かなり厳しい処分を受けるでしょうから。」

誰にだって言えないことの一つや二つあるしのどかもそれは理解しているものの、のどかは修学旅行に来てからの超鈴音の変化を見て超はもしかしたら本来の自分とは全く違う仮面を被っていたのではと思っていた。

そもそも魔法に関わる人間の立場はデリケートで難しい部分もあるのは知っているがそれは厳密に言えば魔法協会の問題であり、一応部外者の横島が近右衛門や高畑と協力して超を止めるような立場になったのは身近な夕映やのどかですらやはり驚きのことである。

加えて横島自身は決して悪い人間ではないが法や規則を重んじて頑なに守るタイプではないし、何より自分に火の粉が掛からぬような問題に首を突っ込むとも思えない。

超は一体何をしようとしていたのだという疑問は未だ少女達の中では分からぬことだった。


「仮に超さんが世のため人のためと考えて何かをしようとしたとしても、それが本当に世のため人のためになるかは別問題だと思うです。 かつて魔法世界で戦争を止めた赤き翼の人達も結果として世界に平和をもたらしたので英雄と呼ばれてますが、一歩間違えれば世界をより荒廃させた可能性も十分にあったと思うですから。 まあそれを語るなら二十年前の戦争の主犯とされる秘密結社やその真意がはっきりしないことには何も言えませんが。」

願わくば一言相談して欲しいとのどかは今でも思っているが、対する夕映はもう手遅れだと考えてるようである。

横島も高畑も近右衛門も理不尽に何かを強いるタイプではないし、一言相談して欲しかったのは誰よりも彼らなのだと夕映は理解していた。


「やっぱり寂しいね。」

結局自分達では何もできないことにのどかは歯痒さと寂しさを感じついついため息を漏らしてしまう。

元々さほど親しい友人とまではいえないものの、昨年の麻帆良祭以降は何かと協力する機会が多かった友人なのだ。

だがそんなのどかもまた一方では人はこうして離れていくのかなと考えると、寂しさと同時に自分は大切な人達とはきちんと話して理解する努力が必要なのだと改めて感じる。

少なくとも超のようなやり方はダメだと自身の心に刻み込むことになる。

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