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二年目の春・4

「やっぱ本格的に料理をするなら味見が出来ないのはハンデだよな。 食材の一つ一つの味を知ることが出来ないのとか特に。」

同じ日横島は茶々丸に頼まれて新しい料理を教えていたが、茶々丸の料理は本当に機械が作るように正確に横島の教えをコピーすることでしかない。

昨年の麻帆良祭のように大量の調理をする場面ではその力量が大活躍するも、美食家とも言えるエヴァとチャチャゼロに美味しい料理を食べさせてやりたいと言うのならそれ以上が欲しいところだった。


「味覚と嗅覚はセンサーで追加出来ないこともないが、後々のことを考えるとそれこそ本当に食事が出来るのが理想か。」

茶々丸自身は今も超達の動きや処遇も気になるようであったが、せっかく横島の店で働くならば新しい料理を覚えたいと頑張っている。

元々向上心があり純粋な茶々丸はガイノイドの能力も相まってすぐに覚えることが出来るものの、味見が出来ないのが致命的であり食材の味に合わせた調理は出来ないのだ。

無論現時点でも茶々丸の料理の腕前はかなりのもので、仮に横島の助手などをするならば十二分にその力量がある。

それにかつて幽霊時代のおキヌもそうだったが、味見や匂いが嗅げなくても十分に家庭料理としては美味しいものが作れてはいる。


「やはり味見ですか。」

ただ向上心が高く最早ただのアンドロイドに収まらぬ自我を持つ茶々丸はそれ以上を求めており、ここ数日横島の調理を見ていた中で調味料の微妙な変化とその理由を毎回尋ねて自分も覚えたいと口にしていた。


「新しいボディ少し急ぐか。 タマモも一緒にご飯食べるの楽しみにしてるし。 元々超さんのボディは魂を持つ存在を想定してないからな。 新しいボディは魂を持つアンドロイド専用なんだよ。」

この日茶々丸は昨夜に続き新型ボディの稼働テストとして超鈴音製新型ボディで居たが、横島は茶々丸の魂の成長が予想以上に早いことから自身が設計している新型ボディの完成を急ぐことにする。

超鈴音も決して無能ではなく百年も前の時代に来て茶々丸のような魂を持つガイノイドを造れた時点で天才ではあるが、命を扱うには少しばかり経験不足だった。

まあ横島も決して自身の経験はあるとはいえず相変わらずアシュタロスの遺した遺産と、ドクターカオスにこき使われた経験でなんとかするので超鈴音のことをどうこう言うつもりはないが。


「正直、私が魂を持ち生きてるなんて未だに信じられないです。」

「エヴァちゃんの魔力を常に動力源にしてたことが一番の原因だろうな。 霊格が人間とは違うし、チャチャゼロも厳密に言えば相当前から魂を持ってるしな。」

科学の申し子のはずの茶々丸は、自身が魂という超鈴音でさえ解明出来ない命の神秘を持つことには未だに半信半疑らしい。

茶々丸はチャチャゼロを姉さんと呼ぶが、同じエヴァの魔力から生まれた二人は血は繋がらなくとも魂は本当に姉妹だと言える。

チャチャゼロ本人はだからどうしたと言うかもしれないが茶々丸にとっては天地がひっくり返るほどの衝撃なのだ。

まあ茶々丸の魂の急速な成長は横島やタマモと親しいということも満更無関係ではなく、現状では茶々丸の周りには霊格の高い存在が多いことも原因だが。


「まあ、早くても超さんの件が片付いてからだけどな。 下手なもの見せて刺激したくないし。」

そのまま茶々丸は料理を教わりながら今後の話を聞くが、超と葉加瀬の一件に話が及ぶとやはり割りきれないものがあるようで何とも言いようがない無力さを感じてならないようだった。


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