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その二

「たかが人間の分際で偉そうに… 貴様らを殺すために拙者は立ち上がったのだ!」

魔鈴の言葉がカンに障ったのか、犬飼は怒鳴りながら横島達を睨みつける


「その割には俺達から逃げ回ってたな?」

「貴様ー!!」

怒りを更に増加させるような横島の挑発に、犬飼は我慢の限界だったらしく八房で斬りかかっていく

しかしその瞬間、横島と魔鈴は静かな笑みを浮かべた


迫り来る斬撃を左右に別れてかわした二人は、即座に反撃に出る


「光よ… 全てを覆い隠せ!」

魔鈴は強烈な光の魔法を唱えて、犬飼の目をくらます

ただの光だが、深夜の暗さになれた目には効果抜群であった


「終わりだ犬飼!!」

横島は一瞬で霊力を高めて、草薙の剣に霊力を込めていく

剣は横島の霊力に反応するように、青白い光がより強力に輝いていた


「クッ… 貴様らっ……」

見えない目で無差別に八房を振るうが、横島には当たらない


ザシュッ!!

そして横島は犬飼の隙をついて一撃を加えた

草薙の剣の強力な一撃に、八房を握っていた犬飼の右腕が切り落とされる


「グワァァーー!!」

犬飼の叫び声が辺りの静かな森に響き渡った


「トドメだ」

横島は追撃の手を緩めること無く、フェンリル化を避ける最後のチャンスとして犬飼にトドメを刺そうとする


「クッ… もう遅い。 フェンリルはすでに復活している」

切り落とされた右腕を押さえつつ、犬飼は力を解放した

横島は最後のチャンスにと犬飼に斬りかかろうとするが、ほんの僅かだけ間に合わない



「ゴオオオーン!!」

凄まじい叫び声と共に、犬飼の体は巨大化していく

そして横島が斬り落とした腕も完全に再生されてしまう


「間に合わなかったか!」

一旦フェンリルから離れて魔鈴と合流した横島は、悔しそうに拳を握りしめる


「だが、無駄では無かったようだ。 満月を待たずして無理矢理フェンリル化した事と、ダメージを回復するのにパワーを使った為、エネルギー不足に陥っている。 概ね未来と同じ強さまで落とせた」

その時閉じていた心眼が開き、フェンリルの様子を横島と魔鈴に告げた

これもフェンリル対策の作戦の一つであり、可能な限りフェンリルに変化する前にダメージを与えること

そして出来ればフェンリルになる前に倒すと言うのが目的だった


「あれで力が落ちてるとは…」

魔鈴はフェンリルから感じる凄まじい力に、恐怖を感じていた

いかに本物では無いとはいえ、世界を滅ぼした魔獣の凄まじいに言葉が続かない


「全力で行くしかないな… じゃなきゃ殺される」

そして横島も未来でのフェンリルとの戦いを思い出し、本当に自分達が勝てるのか不安になっている



時を同じくして近くにテントを張り休んでいた西条、令子、唐巣、エミ、そしてジロウはフェンリルが現れた凄まじい力を感じて目を覚ましていた


「満月は明日だぞ!」

「せっかちな奴ね! 夜襲をかけてくるなんていい度胸だわ」

西条と令子達は驚きながらもアルテミス召喚魔法陣に走っていく


「これほどとは… 魔鈴君と横島君は無事だろうか」

唐巣は見張りをしていた横島と魔鈴を心配する

犬飼がフェンリルに変化したのは、間違いなく横島達と戦っているからだと唐巣は理解しているのだ


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