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二年目の春・3

「やれやれ。」

一方超鈴音が警戒する高畑は超達から数百メートル離れた場所で超達の会話を聞いていた。

街中であり正確には見える肉眼で範囲ではないのだが、腕時計型通信機に送られてくる映像をリアルタイムで見ている。

高畑の腕時計型通信機には常時超達を監視している異空間アジトのメインシステムから常に超達の居場所と映像が送られて来ており、GPSのように地図とセットになっているので追跡と監視が物凄く楽だった。

しかも会話も丸聞こえでプライバシーも何もあったもんじゃない為、この機能は高畑の腕時計型通信機にしか追加してなかったが。


「理解してる方も問題だがしてない方も問題だな。 大人しくしてくれればいいんだけど。」

この時高畑は喫煙所でタバコを吸いながら超達の反応を見ていたが、世界を救うという目的の為に多少の犠牲は仕方ないと割りきる超鈴音も犠牲の意味をリアルに受け止めきれてない葉加瀬も問題だった。

それとあまり反応がない五月も曖昧な立場を取ってはいるが今のところ超の協力者であり無視できない存在である。


「誰かが力づくで止めなければならないならば……。」

超達はこのまま諦めるだろうかと考える高畑であるが誰かが力で止めなければ止まることも理解することも出来ないならば、それは教師として担任として二年も見てきた生徒達の暴走を止めるどころか気付きもしなかった自分がやるべきだと決意を固める。

正直魔法世界の救済という部分だけで見るならば超鈴音とその計画は一概には否定出来ないと高畑は思うが、同時にあの計画が上手くいくとはやはり思えない。

ここで超達を止めて理解させなければ、彼女達のこの先の人生は命尽きるまで平穏な日々が訪れないだろうことを高畑だからこそよく理解していた。

そのままタバコを吸い終えた高畑は移動を始めた超達を追うように一定の距離のまま尾行していくことになる。



「王手だな。」

「うむ? 待った!」

そしてこの日の横島の店では相変わらずエヴァが年配男性達に囲まれていた。

年配者の一人が囲碁は下手なので将棋で勝負を挑むが年の功というべきかエヴァは将棋も強いのだ。


「いい年をして何度も待ったなどして恥ずかしくないか?」

「恥ずかしくない! 勝ちたいんじゃ!」

何度となく待ったをする年配者にエヴァは流石に呆れ果てた様子であるが、それでも待ってやる辺り何がなんでも勝ちたいと語る年配者が嫌いではないらしい。

ちなみにタマモはエヴァの隣に座り、エヴァと年配者のやり取りを楽しげに見ながら年配者の奢りでケーキをご馳走になっている。


「あっちもそろそろ王手がかかった頃か。 さて超さんはどう出るのやら。」

「このまま敗けを認めることはないと?」

「戦うなり計画を発動して潰されたなら敗けを認めるかもしれんが、実質準備以外は何もしてないからな。 これで諦めるなら茶々丸ちゃんの説得で方針変更してるよ。 あの時説得を聞いてれば多少の問題には目を瞑ったしな。」

エヴァが居ると朝から店が賑やかだなと横島は笑いながら茶々丸と共に朝食の混雑の後片付けをしていたが、時計を見てそろそろ超に査察が知れた頃だろうと告げた。

茶々丸は願わくば素直に敗けを認めて学園側と話し合って欲しいようだが、横島はその可能性は薄いと見ている。


「ですが現状で超に出来ることは……。」

「超さん達は秘匿拠点を制圧されもぬけの殻なことまではまだ知らんだろうしなぁ。 もっと言えば今回はハニワ兵も動員したし俺もかなり関わってるからな。 そこを知らなきゃ諦められんだろ。」

現状では茶々丸でさえ最早詰んでるとしか答えが出ないが問題はそれを超達が知らないことで、高畑さえ出し抜けばと考えていることなのだが。


「まあ高畑先生に任せとけば大丈夫だろ。」

超鈴音の最初で最後の反撃が来るのか来ないのか、茶々丸はやはり不安なようだが横島はあまり心配してなかった。

赤き翼という英雄に育てられ世界の裏の裏まで見てきた高畑の経験と実力は本物なのだ。

時には迷い間違うこともあるだろうが、横島は自分の信念以外は見向きもしないような狂信者のような輩よりはよほど人間らしくていいと思っている。

まあそんな高畑だからこそ、渋々でも修行に協力したりしているのだから。

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