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二年目の春・3

その後もワイキキ周辺の散策をする木乃香達だが、木乃香はふと視界に入る人々を見てはこの人はどんな人で恋人や家族はどんな人なんだろうと考えていた。

実は昨夜美砂達に言われたことが微妙に頭から離れなかったせいか些か寝不足になってしまった木乃香は、一晩いろいろ考えていたのだ。

自分の気持ちに横島の気持ちに現状とこれからのことと考えるべきことは限りなくあったし、答えが出るようで出ない状況が今も続いている。

それと答えという訳ではないが木乃香にはそもそもの問題として円はともかく美砂と桜子が横島とこれからのことをどうしたいのかすら聞いてないので、昨夜の彼女達の言葉の真意すら未だに分からなかった。

誰かが恋人になれば後は引かねばならないというのが恋愛のルールであり美砂達はそこをはっきりさせたいのか、それとも別の答えがあるのか聞いてない。

正直なところ木乃香はこのままみんなで仲良くやってきたいと思っていて、現状に大きな不満などないし不満があれば話して解決すればいいとしか思えない。

横島と一緒に居たいかと聞かれれば一緒に居たいし、横島に特定の恋人が出来たらと思うと胸が締め付けられるような不安が込み上げてくる。

だが自分達の誰かが横島と恋人になっても他が上手く行くとはあまり思えず、今の家族のような関係を壊したくないという気持ちも強い。

それにタマモが悲しむと思うとそれはしたくないし、出来るならばみんなが百パーセントとは言わなくても納得出来る答えが欲しい。


「横島さんはウチらのことどう思ってるんやろか。」

「突然どうしたの? 好きに決まってるじゃない。 何を今更。」

あまりに突然突きつけられた難題に木乃香の思考はぐるぐると迷走を始め、最大の疑問である横島の気持ちについてうっかり言葉に出してしまう。

そんな木乃香に明日菜は少し複雑そうな表情を浮かべて夕映とのどかとさよは驚くが、ある意味他人事であり空気が読めないというか読まないハルナはニヤニヤとしながら端から見た横島の分かりやすい本音をあっさり暴露していた。


「それは家族のような子供のような関係の好きしょうが。」

「建前上はそうなんでしょうね。 でもマスターの本音なんて見てれば分かるじゃない。 あの人恋愛オンチなんだから素直に見てどうすんのよ。」

若干悪のりしてる気配のあるハルナに明日菜は呆れたように横島は自分達を女として見てないだろうと告げるが、木乃香達はともかくある程度冷静に横島を見れれば分かることで当然近右衛門達にもバレバレなことである。

まあ実際どの程度の恋や愛になるかは議論の余地があると誰もが考えているが、ただの子供扱いでないのは見る人が見れば分かることだった。

そもそも横島の女好きは魂に刻まれたレベルなので体裁を整えたところで本質に変化がある訳ではなく、昔に比べると人並みに理性が成長したただそれだけとも言える。


「そこで他人事のような顔してるあんた達もおんなじだからね! どうせ自分達は相手にされないなんて考えてるんでしょうけど。 私から見て恋愛の情なのか家族の情なのか分からないのはさよちゃんだけよ。」

さてハルナの暴露というか暴走は日頃止める明日菜が当事者となってしまい止められなかったことで更に続いてしまい、矛先は自分達は論外だろうと若干悲しそうにしつつも他人事のように受け止めていた夕映とのどかにも向かう。

流石にハルナもさよと横島の関係は読めてないようだが、半ば諦めてる夕映とのどかも木乃香や明日菜と同じだと言い切り喜びなのか困惑なのか分からないが慌てさせる。


「恋愛ですか。 私にはいまいち理解出来ないんですよね。」

ちなみに一人だけ分からないと言われたさよだが、一応神霊とはいえまだ一年未満で修行も一切してないので一般的な幽霊と大差ない。

流石に愛や恋を理解し求めるには今しばらく時間が必要なようであった。


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