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二年目の春・3

「これも美味しいね!」

この日の夕食は地元のレストランでの夕食だった。

日系や中華系や欧州からの移民が多いハワイではいろいろな国の料理が独自進化を遂げた物もあり、この日はそう言ったハワイの地元の人達が食べる料理が多い。

お国柄か料理の仕方が違うのか一部口に合わない物もあるものの全体としては美味しく食べられている。

ただ横島に近い少女の一部にはそろそろ横島のご飯が食べたいと思い始めた者も居ない訳ではなかった。


「木乃香ならこれどう作る?」

「うーん、もう少し油を抑えて隠し味に少し醤油を入れるなんてどうやろ?」

外国の料理は横島が気分で作ることが昔からあり少女達も美味しくて好きなのだが、極論を言えば横島の作る海外の料理が海外で出てくる訳じゃないんだと今回の修学旅行で少女達は学んでいた。

美味しいことに変わりはないし新しい味に出会う感動はあるものの、それを横島や木乃香ならどう作るだろうと考えてしまう辺り少女達は骨の髄まで横島の味で馴染んでるとも言える。


「そうそう、お菓子食べた? お菓子は日本の方が上だね。」

「お菓子かぁ。 私達も昨日買って食べたけどさよちゃん以外はほとんど食べなかったわよ。」

「マスターとか木乃香が時々作るお菓子美味しいもんね。」

「そこは比べたらダメでしょ。」

年末年始なんかは帰省して横島の料理を食べない期間はあったが、その期間は本物の家庭の味を食べていたため不満はなかった。

ただまあ横島が甘やかしてるとも言える少女達はすっかり美食傾向にあり、離れてみて自分達の日頃の食生活の良さを改めて理解することになる。


「でもさ、ここだけの話。 私達もこれからのこと考えないとね。」

先にも上げたがさよと明日菜以外は別に横島と数日離れるなんて珍しくはないが、そんな少女達ですら何かにつけて横島のことを思い出す辺り自分達の中で横島が占めるウエイトの多さも改めて感じていた。

この夜はそんなことを感じたからか木乃香と明日菜の部屋に美砂達三人がやって来て、日頃あまり話さないこの先のことを口にする。


「これからのことってなによ?」

「明日菜は将来どうするの? 高畑先生なら高校か大学に行けば付き合える可能性もないわけじゃないでしょう。 それとも……。」

これからのことは木乃香達や美砂達やあやか達はそれぞれに話す機会はあったが、話す内容は微妙に違うし意外なことかもしれないが木乃香達と美砂達やあやか達が互いに本音をぶちまけたことはまだない。


「高畑先生は家族よ。 タマちゃんと横島さんみたいな。」

「じゃあマスターは? 仮にマスターに彼女が出来て心から喜べる?」

「横島さんは……。」

やはり美砂は特に現在の居心地のよさに甘えがちな自分達に危機感のようなものを抱いており、中でも表向き横島に好意など無さげに振る舞う明日菜の本音に足を踏み入れていく。

高畑は家族だと堂々と言い切った明日菜に円と桜子は少なからず驚きの表情も浮かべるが、美砂は更に追求し明日菜にとって横島はなんなのかと問いかける。


「木乃香だって他人事じゃないわよ。 木乃香の場合家庭の事情が複雑だから、下手すれば好きでもない相手と結婚させられるんじゃないの? 最近聞かないけど前は学園長先生お見合いさせてたんでしょう? まあ学園長先生の様子見るとマスターが味方してるうちは大丈夫っぽいけどね。」

高畑のことは家族だと言い切った明日菜も対象が横島に変わると言葉が途切れてしまい、美砂は矛先を先程から静観している木乃香にも向ける。




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