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その二

それから丸一日過ぎた次の日の朝、ようやく長老が目を覚まそうとしていた


「……わしは生きておるのか?」

目を開くとそこは自分の家の天井であった

長老は一瞬何故自分が寝てるか理解出来なかったが、すぐに思い出したようだ


「あら、起きたのね? まだ寝てなさい」

辺りを見回すと、少し暇そうなタマモが長老の容態を見に来る


「犬飼はどうした!?」

「私達が来た時にはもう居なかったわ。 満月まで後二日、犬飼は行方不明よ」

慌てて犬飼の事を聞く長老に、タマモは少し険しい表情で答えた


「とりあえず、大丈夫そうね。 今医者を呼んで来るわ」

タマモは長老を軽く霊視したが大丈夫そうだったので、カオス達を呼びに行く



「長老!」

カオスより先に長老の家に入って来たのは、人狼の仲間達である

カオスは大丈夫だとは言ったが、目を醒まさない長老に心配していたのだ


「皆の者心配をかけたな… 他の者は無事か?」

「はい! 先日の人間達が助けてくれましたので、みんな生きてます!」

「そうか… 本当によかった」

喜びの声を上げる人狼達を見て、長老はホッとしたように笑顔になる

仲間から犠牲者が出なかったことが何より嬉しい


「無粋ですまぬが、少し診察したい。 前を開けてくれんか?」

タマモが連れて来たカオスは、ちょっと困ったように人狼達に声をかけた

無事を喜ぶ前に診察は必要なのだ


「すいません」

人狼達は長老の前を開けてカオスを通す


「長老殿には初めてお会いするな。 わしはドクターカオス。 横島の仲間じゃよ」

長老に軽く自己紹介したカオスは、さっそく長老を診察していく


「うむ…、タマモの霊視も問題無いようじゃし、体も大丈夫じゃの。 さすがは人狼族じゃな」

人狼の回復力や生命力の強さに、カオスは改めて感心している


「いろいろご迷惑をおかけしました」

診察が終わると、長老はカオスに深々と頭を下げた

状況から見て自分達を救ったのがカオス達だと、理解したようである


「いや、今回の件はわしらにも責任がある。 謝るのはこちらだ」

少し表情の固いカオスは、静かに頭を下げた

未来を知り被害が少なくなるように努力したカオス達だが、結果的に人狼族に被害が増えてしまった


犬飼の行動の予測をしていたカオスは、人狼族に対する危険性に気がつかなかった自分に怒りを感じいる


「長老ー! ご飯を持って来たでござる!」

そんな時姿が見えなかったシロが、お膳に山盛りの料理を持って現れる

どうやら長老の食事の用意をしていたようだ


「シロや、ありがとう」

どうやらかなりお腹が空いていたらしく、長老はガツガツと食事を食べはじめる


「さすがに人狼の食欲は凄いわね…」

病人の長老の凄まじい食べっぷりに、タマモは思わず感心してしまう

シロで見慣れた姿ではあるが、寝起きの病人の長老までも凄まじい食べっぷりなのは驚きであった


「こちらは一段落したな…」

ホッとした表情のカオスと人狼達

まだ人狼達には犬飼に対する不安や怒りなどがあるが、それでもあれだけの被害が出たにも関わらず死者がゼロだったことは喜びである


この日、人狼の里はようやく重苦しい空気が無くなり、笑顔や笑い声が戻っていた


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