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白き狼と白き狐と横島

それから店が開店する時間になり、店内はいつものようにたくさんの客で賑わっていく

そんな店内で客達が話してる内容で一番多かったのは、やはり例の事件だった

どうやら昨日近くで被害者が出たらしく、付近の住民には不安が広がっているようである


(今日は愛子が来る日か……、俺か雪之丞が迎えに行った方いいかもな)

客達の噂話を聞いた横島は魔鈴達に視線を向けて自分達も気をつけねばと思うと同時に、夕方から勉強を教えに来る愛子の送り迎えが必要だと考えていた


(念のため愛子にも文珠を渡した方いいかもな)

魔鈴やシロとタマモには以前文珠を渡していた横島だが、深夜一人で帰る事もある愛子にも必要かと考える



それから時間は過ぎて夕方になった頃、雪之丞は愛子を迎えに学校に行っていた

横島が行かなかった理由は、ただ単に雪之丞が暇だっただけである


「よう、今日は随分静かだな……」

愛子を探して教室に入った雪之丞だが、校内に生徒が居ないのを少し不思議に感じていた

まだ夕方の早い時間だし、普通なら部活の生徒達が大勢いるはずである


「昨日近くで連続殺人の被害者が出たから、しばらく部活は禁止になったのよ」

一人で窓から外を眺めていた愛子は、突然雪之丞が来た事に少し驚いたように答える


「らしいな。 横島が心配するから迎えに来たぜ」

「相変わらずね。 横島君も雪之丞君も……」

愛子は思わず笑みを浮かべていた

普段は何も考えてないような顔をしてるのにいろいろ心配している横島と、言われたから来たと言う雪之丞もまた心配してるのを愛子は知っていた

雪之丞とは付き合いは短いが、横島と同様にかなり損な性格なのはすでに理解している


「さあ、行くぜ」

愛子の笑みに少し照れたのか、雪之丞は背を向けて先に歩き出す


「そうね。 今日もビシバシしごくわよ!」

横島や雪之丞の言葉にならない暖かさに、愛子は嬉しそうに微笑み後を着いてゆく



それから二人は魔鈴の店まで歩いてゆくが、やはり学生や子供は少ないようだった

殺人事件自体は珍しくないが、目的不明の連続殺人とマスコミが騒いでるだけに不安は広がっているようである


「早く犯人捕まらないのかしらね~ オカルトGメンが捜査協力してるのがテレビで話題になってたわよ」

事件について少し話していた二人だが、愛子がオカルトGメンの心霊捜査について話すと雪之丞の表情が少し変わる


「あまり期待しない方がいいぜ。 オカルトGメンの連中はロクな連中じゃないし、心霊捜査もそんなに有効な訳じゃない」

美智恵や西条を思い出した雪之丞は、若干不快そうな表情だった

テレビや新聞などで心霊捜査が話題になってはいるが、美智恵や西条が信用出来ないのはよく理解している

それにオカルトGメンへの期待度の高さから心霊捜査が騒がれてはいるが、それほど有効でないのを雪之丞は知っていた


「そうなの?」

「何事にも長所と短所はあるだろ。 心霊捜査も同じだよ。 特殊な能力が必要だし、成果が必ず出る訳じゃないんだ」

少し驚く愛子に、雪之丞は簡単な心霊捜査について説明していく

どうやら裏の世界で生きた経験から、雪之丞は心霊捜査を多少詳しいようである


二人はその後も話しをしながら歩くが、特に何もなく魔鈴の店まで着いていた


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